-----祭りが行われる場所、さすがにまだ賑わう程人だかりも無く、閉まっている屋台も多いがもう開いている屋台が少数だがあった。
「獏良くん、あれ食べよ!」
遊戯くんは、焼そば屋を指差し、店に向かった。
「おじさーん、焼そば2つください!!」
その店のおじさんは、横に並んだボクと遊戯くんを見比べる。
「おっ!?お兄ちゃんの分も買ってやるんか、偉いなボーヤ!」
意味が分からなかったが、どうやら兄弟と間違われたらしい。
「ち…違うよ!獏良くんは、友達だよ。同じクラスの!!」
遊戯くんは、慌てて否定する。
「そうか、悪かったな。お詫びに大盛りにしておいてやるぜ。持っていきな!!」
「わーい、ありがとう!じゃあ、これお金ね」
「毎度!!」
遊戯くんは、嬉しそうに駆け出して行った。
「獏良くん、行こ!」
ボクはその後を追って行く。
「ねぇ、どこで食べよっか?」
「うーん、ベンチとか無さそうだし…」
ふと、奥の方の川に目がついた。
「あっ、あの川辺はどうかなぁ?あそこだったら、いい場所だと思うよ」
「そうだね!行こ、獏良くん!!」
ボク達は川辺の近くの芝生へと向かった。
そこで遊戯くんは急に立ち止まり両手に持った2人分の大盛りの焼そばに目をやった。
「あっ………」
移動するのに夢中になってか、手がソースでベタベタになっている。
「あーぁ…どこかに水道でも無いかなぁ…」
周りを見回したが、どこを見てもその様な物は何も無い。
「じゃあ、遊戯くん、ボクハンカチ持ってるからこれで…」
ボクは遊戯くんの手にある焼そばを安全な場所に置き、手を拭いてやる。
「ごめん…これだけしか無かったから…」
遊戯くんは、優しく微笑む。
「ありがと。これで十分だよ。じゃあ、食べよ!」
「うん」
目の前に広がる川を前に焼そばを食べ出すボク達。
…と、突然思い出したかのように遊戯くんは話し出す。
「ねぇ、獏良くん。今日の事、みんなには内緒にしておこう!来年のこの日、この時間にまた一緒に来たいから!!」
「うん、そうだね。ボクもそう思ってた」
ボクは、少しもためらわずに言葉を返した。
「ボク達だけの秘密!ねっ、約束だよ?指切りしよ!!」
「うん」
ボク達は、お互いに微笑みながら指切りをする。
そこにもう1つの手が横から飛び入りし、ボク達の手をしっかりと握った。
その手の人物---見れば、城之内くんがそこにいた。
「おい、お前ら水臭いぞ。2人で何約束事してたんだ?俺もまぜろよ」
「じょ…城之内くん!?何で、こんな所に…」
遊戯くんのその一言に城之内くんはつまらなそうな顔をする。
「何でって…そりゃ、俺が聞きたいぜ。俺はちょっと買い出しに…そしたら、こんな所にお前らが浴衣着ていたから、声かけたんだけどよ」
「そっか。ごめん城之内くん…」
「それにしても、こんな時間に何やってたんだ本当に、祭りはまだだぞ!」
「い、いや…ハハハ、ちょっと、ね?獏良くん!」
「えっ!?そうだね」
城之内くんは複雑そうな顔をする。
「ま…いいけどよ…」
「じゃあボク達他に行く所あるから、もう行くね!」
遊戯くんは突然立ち上がりボクの手を取って駆け出す。
「あ…遊戯くん、待ってよー」
「おい!この焼そば、忘れてるぞー!!」
城之内くんはうまく投げ渡す。それを遊戯くんは慌てて受け取る。
「おーい、5時集合だからな、忘れるなよ!!」
ボクと遊戯くんは顔を見合わせながら駆けて行く。
「うん」
「分かってるよー!」
しばらく走り続け、息が切れてきた頃…
「ねぇ…遊戯くん、これからどこへいくの?」
「ボク達だけの約束の場所!ねっ、行こ!!」
「うん、そうだね。ボク達だけの」
ボクは、遊戯くんに握られたままの手をさらに強く握り返す。
ボク達はボク達だけの場所へ向かって行く。
それは、ある日の午後の事だった………
|