はらり……… 花びらが、一枚落ちた………… なんで……… はらり……… 花びらが、一枚落ちた………… 手に持つ数輪の花に滴り落ちる涙。 はらり……… 花びらが、一枚落ちた………… 「……何で………… 答えてよ……!!!」 とある病院の室内……… 横たわる彼女を見て、彼はガクリと膝を突いた。 それは、今日の午後のことだった。 はいつも通り学校から家へ帰る支度をしていた。 「さん、帰ろっか?」 獏良からの声。 「うん、帰ろ!! じゃあ、みんなバイバイ!!」 は彼に向かいニッコリ微笑むと、振り返ってクラスメイトである遊戯達に手を振り、そして獏良もみんなに別れの挨拶をした。 クラスでは誰もが公認の仲の2人。 「気を付けてね、ちゃん、獏良くん」遊戯からの声。 「おう、明日な!!!」城之内くんからの声。 ・・・・・ その様にして、それぞれ皆が2人に向かって声を掛けた。 は再度大きく手を振ると、教室を出ていった。 と獏良の関係は恋人同士とまではいかない位だが、誰もが認めるほどの仲の良さだった。 しかしその当の2人は、お互い気になる存在であってもそれを確かめる事は出来ないでいた。 いつもの帰り道・・・いつもの景色・・・・・・ いつもと同じ笑顔を見せて獏良に話し掛ける。 みんな、いつもと同じ・・・ だが、獏良だけが違った。 密かな想い・・・・・・ 募っていく想い・・・・・・ 獏良はそれがばれないように、顔に笑顔を作る。 「・・・ねぇ、どうしたの?何だか今日の獏良くん、いつもと違う感じ・・・・・・」 は彼の状態を察して、声を掛ける。 しかし、獏良は慌てて首を横に振り、それを否定する。 「ううん、そんな事無いよ!ボクは、いつも通りだよ」 「・・・そう?」 そんな獏良には気になりながらも、いつも通り帰り道を共にした。 はらり……… 花びらが、一枚落ちた………… 「ボクが…… ……ボクが……… ………いけなかったんだ………………………」 目を醒ますことの無い彼女。 彼は彼女に近付いて白い布がかぶさった顔に手をつける。 「じゃあ、明日ね。・・・あっ、そうだ。明日、お弁当作っていってあげるから、一緒に食べない?」 「えっ・・・あ・・・うん、そうだね。楽しみだよ、ボク」 その様に言うが、あきらかにおかしい獏良の様子が気にかかって、は彼の顔を覗き込むようにして近付いてみる。 「ねぇ、本当にどうしたの?元気ないよ???」 「・・・・・・ううん、何でも無いから・・・・・・ ・・・さん・・・」 獏良はそう言うと、の腕を引っ張って自分に引き寄せるときつく抱き締めた。 「・・・な・・・何、獏良くん!?」 「・・・ボク、実はさんに話したいことがあるんだ・・・」 そんな獏良に驚いたが、すぐにその意味を察して落ち着いた表情を取り戻す。 「・・・・・・あのね、実はぁー、私も・・・」 お互い少し身体を離し、顔を見合わせる。 「・・・フ、フフフ・・・・・」 が、口元を押さえながら笑みを零す。 「・・・・・ハハハ、じゃあ明日、この事について言い合おうか?隠しっこ無しで・・・」 「うん!そうしよ。じゃあ、約束・・・」 お互いに決めた約束・・・ お互いだけが知る、約束事の方法・・・ は右の手の平を、獏良は左の手の平を重ね合わす。 お互い目を瞑り、静止をする。 『ボクと私は約束を守ると誓います』 という祈りを込めて、お互い心の中で呟いた。 ゆっくりと目を開くと、お互いを手の平を離した。 「じゃあ、気を付けてね獏良くん。あっ、それと・・・」 「何?さん」 「えっと・・・良かったら、後で獏良くんの家に行っていいかなぁ?今日は特別に、私が夕食作ってあげるからv」 「エッ・・・そんな、悪いよ。それにさん家の人に断ってないでしょ?」 「大丈夫、今家に帰って言えばまだ間に合うから・・・それに獏良くん、いつも一人で大変そうだし・・・」 獏良はそんな彩の気遣いがとっても嬉しく思えて、涙が出そうになってしまった。しかし、それも堪えて返事をする。 「 さん・・・ありがとう!じゃあ、ボク用意して待ってるよ」 「エヘヘ、何だかやること無くなっちゃいそうだね・・・私、急いで着替えてから行くね」 「ううん、ゆっくり来てよ。ボク、いつまでも待ってるから」 「ホント、絶対だよ?先に作ってちゃ嫌だよ?じゃあ、後でね」 お互いに挨拶を交わし、は家の中へ、獏良は帰路についた。 はらり……… 花びらが、一枚落ちた………… 冷たい彼女の肌。 出来るなら……どうか、ボクの体温を全部奪って………… ………出来るなら、目を覚まして……… ………………出来るなら、ボクの名前を呼んで………… …………出来るなら………… 彼は彼女の身体をそっと抱き締めた。 『ボク実は言いたい事あるんだ』 『一緒に言い合おうか』 『…待ってる………』 ―――ボク達だけの約束事………… 獏良はの腕を掴んで、彼女の右手の平に自分の左手の平を合わせる。 ―――ボク達だけの約束の形……… 獏良の瞳から途切れることなく流れ続ける涙…… それは重ね合わさった手の上にこぼれ落ちた。 獏良は、部屋を片付けて彼女を待った。 すぐに料理が出来るように準備だけをして、来るのを心待ちにした。 それから1時間・・・2時間が過ぎた。 それでもひたすら待ち続けた。 すると何かを思いついたように立ち上がり、顔面蒼白になって電話に駆け寄り受話器を取っての家へ電話をかける。 しかし誰も出ることは無かった。 獏良はガチャリと受話器を置いた。 その瞬間、電話が鳴る。 獏良は慌てて受話器を取った。 「もしもし?獏良ですけど・・・」 しかし、反応が無い・・・・・・・・・ 「もしもし?誰ですか?もしもし」 「・・・ば・・・・・・」 少しだけ聞こえた声・・・・・・ 「もしもし?・・・ひょっとしてさん?今どこにいるのっ!?」 少し間を置き微かな声が雑音とともに聞こえる・・・ 「・・・(ザザ・・)・・ば・・くら・・くん・・・ ・・・ご・・め・・・んな・・・さい・・・(ザザッ)・・・ ・・・・・・大・・・す・・き・・・・・・」 まるでラジオ番組でも聞いているかのような音で聞こえた声・・・ だが、それは紛れもなくのものだった。 「もしもし?さん、どうしたの!!! もしもし?」 しかしその問いもむなしく、雑音の音さえ小さくなりやがて消えてしまった。 ――そして、電話の切れた後・・・ 何回も繰り返される音・・・・・・ なんで・・・どうして・・・・・・ 瞬間的に彼の頭の中で、様々な想いが過る。 ドンッ! ドンッ!! ドンッ!!! その時、家のドアを叩きつける人物がいた。 「獏良ッ!! オイッ、開けろッ!!!!」 城之内の声。 獏良はゆっくり受話器を置きふらふらと扉に向かい鍵を開ける。 すると城之内は扉と開けて、獏良に飛びかかるように向かっていった。 「オイッ!! 今、連絡があってよ! が・・・が!!!!」 「!!・・・さんがどうしたって!? 城之内くんッ!!!」 獏良は城之内に食って掛かる様に問い詰めた。 城之内は言いにくそうにそっと口を開く。 「オレの所に今、連絡が入ったんだ・・・獏良は知ってるかと思ったけどよ・・・ あのよ・・・が・・・・・・死んじまったんだ・・・・・・・・・」 (・・・・・・・・・・・・えっ・・・?) 突然の言葉に、静止したまま俯いて動かなくなってしまう獏良。 「・・・・・・獏良・・・」 城之内はそんな獏良の肩を優しくポンッと叩いた。 その反動で、意識を取り戻したかのように口を開き話し出す。 「・・・・・・話して・・・たんだ」 「・・・エッ?」 キッと顔を上げると、涙目で城之内にキツく叫び上げる。 「ボクは今、さんと電話で話してたんだ・・・そんなハズはっっ!!!!」 「お・・・落ち着け・・・?お前・・何言って・・・・・・」 しかし、そんな城之内の言葉も遮るように、獏良は彼の胸元を掴みかかる。 「さんは・・・死んでなんかない!!!!」 「オイ、イテーって!!! 離せよ!!!!」 その言葉に我に返り、獏良は手を離した。 「ご・・・ごめん、城之内くん・・・・・・ ・・・ねぇ、今さんはどこにいるか知らない・・・?」 「・・・この街の市民病院のハズだ・・・・・・・・・」 「解った・・・ありがとう・・・・・・・・・」 それだけ言うと、獏良は城之内の横をふらっと通りすぎ、靴を履くと彼を残し、走って家を出ていってしまった。 「あっっっ!!! 獏良っ!!!!!!」 後ろから掛かる城之内の声。 しかし、獏良は振り返らずに走り続けた。 の元へ向かって・・・・・・ 薄暗い病院の中・・・ 時間はすでに夜中の9時を回っている。 着くと同時に、獏良は入り口の花瓶に入っている花を鷲掴みにし、それを一気に引き抜いた。 落ちて割れる花瓶。割れて跳ね返って来た破片で、獏良は手の甲をも傷つける。 しかし、そんな事は無かったかの様に破片を踏みつけて、そのままのいる病室へと突き進んでいった。 今までに無いくらいの怒っているとも、悲しんでいるともいえない表情をして・・・・・・ はらり……… 花びらが、一枚落ちた………… の眠るベッドの上……… 「さん……ボクが…待ってる何て言わなければ……… ………こんな事なら、いっそ……ボクは……」 手に持っていた数輪の花をそっとの顔の横に並べ、立ち上がると険しい顔をしてそれをじっと見つめる。 しかし、それも一瞬の事………獏良はすぐにガクリと膝を突き、ベッドにもたれ掛かる。 「ねぇ、さん……ボク達との約束………明日だったんだよ?……… ずるいよ………ボクは君に、一生何も話せないの……? ……何も約束……出来ないの………?」 獏良は溢れる涙を零さないように、上を見上げてみた。 そこには線香の煙で立ちこめ、真っ白になってしまった天井があった。 「!!!!!!」 その時、その煙の中で何かが形どられる。 それはの姿をした、真っ白な雲の様な幻影だった。 微笑んでいるかのようにも見えるそれは、宙を昇っていくとやがて消えていった……………… はらり……… 花びらが、一枚落ちた…… そして、それはやがて無くなり…… ……落ちた花びらの行く先………それは………………
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コメント・・・ ハイ、まず暗くってスミマセン……ヒロイン、死んじゃってスミマセン………(なんで死んじゃったかは、ご想像にお任せデス…いい加減な……) でも、この話しかなりノリノリで描けました(^_^ゞ どうしても、かわいそう話が好きな私………この後、獏良くん、どうなるんでしょう……… か…考えるのも恐い……ちょっと前の海馬くんストーリーもそうだったが、結局あの時と同じような小説の書き方……ダメだね私…これ以上の実力を伸ばすことは、もう不可能に近いです…でも、これ書いてて自分が泣いててどうする、私!!! うわぁぁぁぁん、獏良くんが泣いてるよぉぉおおお……… どうにも何ねぇなぁ………密かにギャグ…城之内くん置いてけぼりで獏良くんの家で待ちぼうけ〜〜なんて…ちょっと可愛そうだが……… |
02.07.02
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