--- やさしさの方法 ---
「…ん……さん………さん。朝ですよ、起きて下さい」
寝っている少女、を起こすその少年、獏良了――昨日の夜からの家に来ているお手伝いさんである。
いわゆる家政夫と言うヤツで、今はこの家に働きに来ている。
何故かというと、の両親は数日前から、そろって海外へと旅行に行ってしまったのである。
そんな時近所で一人暮らしをしている獏良くんに、の両親のきっての願い――お手伝いに来て、の世話をして欲しい――と無理矢理押し付けたのであった。
『お給料弾むわよv』とか『一人暮らしだしお金を稼ぐためにも丁度いいよ』との両親に上手く丸め込まれたような感じだったが、そんな事よりも人の為に何かをする事が好きな獏良は快くOKして、泊まり込みでの家に来ることになった。
獏良はの眠るベットの隣につき、じっとの寝顔を見つめる。
が薄目を開けると、獏良と目が合う。お互い暫く見つめあい、そして………
「…う……ん…。後、5分だけ………」
それだけ言うと、はクルッと反対側に向いてしまった。
獏良は、そんなに溜め息ひとつ漏らしボソリと呟く。
「しょうがないですね………じゃあ、さんの絶対起きる必殺技を使っちゃいますよ……?」
すると、暫くしての布団がモソモソと動き出す。
それと同時にベッドが軋む。
「…………?」
は、何事が起こっているのか理解できず、恐る恐る後ろを向いてみた。
「!!!」
そこには、の隣で目をつむって眠りだす獏良の姿があった。
耳の近くで、消える去るような声で囁く。
「ボクも……寝ます…おやすみなさい………」
予想もつかなかったそんな状況から、はすぐに対応は出来なくて数秒間その寝顔を見つめながら固まった。
しかし、ある瞬間何かから解き放たれたようにベットから飛び起き、ズザッと部屋の縁にまで勢い良く逃げ去る。
そんな中、獏良はごしごしと目を掻いてゆっくりと起き上がった。
そして、柔らかい爽やかな笑みをに向ける。
「あっ、やっと起きましたね。では朝食の支度が出来てるので、支度が整ったらダイニングの方へ来て下さいね」
「…う…うん、解ったわ……」
獏良は、の反応を見てニコリと微笑むとの部屋から出ていった。
いまだドキドキしているの心臓。
「………もうドキドキだよ………何だって獏良くんは……」
「あ、それと」
「ハイィィッ!!!」
突然の獏良の声。
もうとっくにいないと思ってた獏良に声を掛けられ、思わず直立立ちをしてしまった
「さっきのは、さんのお母様に言われたんですよ?『の事だから、きっと寝起きが悪いわよ。そんな時は隣にいてみてご覧なさい』って……何ででしょうね、本当にさん起きてしまいましたね! ハハッ」
「(オカァァァ〜〜〜ン………何て言う事言うの!!)……そ…それは……別に寝てみてって事じゃないと思うんだけど……」
「そうなんですか…それは悪い事してしまいました……」
獏良は、悲しそうな顔をして壁の柱にもたれるように手を添える。
「ち……違うの!! ううん、ありがとう。しっかり起きちゃったから私!!」
はベッドから飛び出すようにぴょんと力いっぱい起き上がった。
「…よかった……じゃぁ、早く支度しないと学校へ間に合わなくなってしまいますからから、早く着替えてくださいね」
そう言って微笑みだけ残して、獏良は部屋の扉を閉めてキッチンへと戻っていった。
   
    ・
    ・
    ・

未だに止まりそうにないの心臓……

 私の気持ち……ドンドン高鳴っていきそう……
 何で???ど…どうしよう…………
 ……でも、ここでじっとしていられない………

は学校へ行く支度をして着替えを済ますと、洗面所で身だしなみを整えてダイニングの方へと向かった。
「………わぁぁぁ……すごい!!!」
は感激して、思わず感想を口に出して言った。
それもそのハズ………
テーブルに並んでいるものは、こんがり焼けたブレッドに
サラダにスクランブルエッグなどと、様々な食材がそこに並べられていたからだ。
「あ、さん。朝食の用意は出来てますから、一緒に食べましょうか」
と獏良はイスに座って、『頂きます』と声を合わせると目の前にあるモノを食べだした。

 どこでもある一般的な家庭の味……
 でも、どこか違う味………
 それは、きっと獏良くんが作ったから………

「良かったぁー……」
突然の獏良からの声。その声にビックリして、獏良の方へと顔を向ける。
「ど…どうしたの?獏良くん???」
「だって、さんが食べてくれるの楽しみだったから…それに、今日が初めての朝食だからね!」
「う……うん。そうだね///」
その言葉には照れながらも、口に食べ物を運んでいく。

 私の大好きな………
 なんで解ったんだろ………
 やっぱり母親が言いふらしたのかしら……
 その可能性は……限りなく大!!!
 でも………

「ありがとう、獏良くん」
はふわりと微笑むと、頭をかしかしと掻きながら照れる獏良がいた。

今日から始まった、獏良との生活……
その事にはとってもドキドキしていた。
しかし……
「あっ!さん早くしないと学校に遅刻してしまいますよ?」
「いけない、早く食べなきゃ!」
今は食べることに集中して、 を飲み干した。
は、足元において用意してあったカバンを持ち、玄関へと駆け出した。
「ちょっと待って、忘れ物ですよ」
「何!?」
獏良は慌てて何やらを持ってきた。
手に持つそれは…弁当!!!
「はい、今日のお弁当です。ボク、作ってたみたいなので渡しておきますね」
「???うん…ありがとう。それじゃあ、いってきます!!」
は、その言葉に疑問を感じながらも言葉を返している余裕はないので、そのまま何も聞かずに玄関を出た。
「あ、ちょっと待って」
獏良は玄関にある適当な靴を履いて、玄関の外に出てしまったの元へ行く。
「スミマセン。ちょっと気になったので……」
獏良は、の胸にあるリボンのゆがみ直しにかかった。ピンッと引っ張るとキレイに形作られる胸のリボン。
「はい、出来上がりです。行ってらっしゃい、さん」
「…うん、行ってきます」
は、顔を真っ赤にさせながら家を出た。
学校へはダッシュで駆け込み、予鈴と共に何とかギリギリセーフで教室に着いた。
そして、午前の授業が始まった。


  ◆  ◆  ◆


―――昼休み……
は、友達を連れて屋上でお弁当を食べる約束をしていた。
階段を上がり扉を開ける。

 さわやかな風、気持ちいい日差し。

はそんな中で、獏良くんに作ってもらった弁当のフタを開けた。
 
 獏良君のお弁当〜〜♪何かなぁ〜〜〜

は心をわくわくさせながら、その中身を見た。
きれいに整っていて、色とりどりの弁当の中身………
でも………何かおかしな予感がしてその中身をじっと見つめた。
その予感は的中した。

 な……何かが、動いた!?

時間が経つとともに、奇妙な色に変色していく弁当の中身。
は、見かねて勢い良くフタを締めた。

 ………オカルト弁当……

その言葉が頭の中を過った。
獏良くんの中にもう一人の人物がいるのは知っていたが……
作ったのはその、もう一人の彼だったようだ。
なぜなら――

 ――作ってたみたい――

その言葉が、何度も何度も頭の中で繰り返される。
疑っておけばよかった…と、今さらながら後悔しまくる ………
「どうしたの?……弁当食べないの??」
がっくりと肩を落としていたを見て、心配そうに声を掛ける友人。
「うぅん…ちょっと今日は、購買でパンでも買ってくるよ…ゴメン、ちょっと待ってて……」
「うん……いいけど…気を付けてね」
「ありがとう、行ってきます……」

は財布の中身を確かめながら購買へと向かう。
先程の光景を思いだしながら…

 ――オカルト弁当――

その言葉ばかり頭の中で繰り返される。

 …やめよう…考えるのは。獏良くんは、悪くないわけだし……
 でも、どうやって作ったんだろ…あれ………

その事を、思いながら購買へと足を進めた。

  ◆  ◆  ◆

―――昼食も終わり、そして、午後の授業が終わった……
は友人に『今日は急いで帰るから』と、別れだけを告げて急いで教室を出た。
しかし、昼とは打って変わって何故か雨になってしまった天気………

 うわ〜〜ん、なんで〜〜…お昼は、あんなに晴れてたのに……

学生カバンを頭の上に乗せて、少しでも雨に当たらないようにした。
学校を出て、家へと向かう……その時だった。
校門をくぐり抜けたところで、の腕をガッシリと掴むものがいた。
「待って…!」
その声の人物……それは獏良のものだった。
「えっ!?…獏良くん?」
獏良は少し照れ臭そうに、微笑んだ。
「そろそろさんが帰って来る頃かと思って、学校の方まで迎えに来ちゃいました。
雨が降ってきてしまったし、一緒に帰りましょうか」
そう言うと、獏良はの肩を掴んで引き寄せて、ちょっとだけ強引に自分の笠の中に入れさせた。
「うん…そ…そうだね。帰ろ!」
は少しためらいながらも、嬉しくって明るく答えた。
どうやら獏良は雨が降ってくる事は知っていたようで、そのために迎えに来てくれたようだ。
歩いている途中、は思いきって弁当のことについて聞いてみた。
「うー…ん、実はボクも覚えが無くって……気が付いたら作ってあったので…」

 やっぱり……作ったのは、もう一人の獏良くんだったのね……
 でも、こちらの獏良くんには罪は無いし………

「スミマセン……さんに迷惑掛けてしまったみたいですね……」
「うぅん、大丈夫だよ。その事については、なんとかなったから」
は、ポンッと獏良くんの腕に手を置いた。
「………?どうしたんですか?」
「いいの……気にしないで…獏良くん……」
獏良は首を傾げながらの方を見つめた。

しかしある瞬間、は目の前の光景に違和感を感じた。
 
 …ピシャ!!!!

の身体は、丁度水たまりの所で激しく横転してしまった。
「あ……あれ?」
「わっ!! 大丈夫ですかっ!!?立てますかぁっっっ!!!?」
獏良くんの焦りの声がの耳に届く。
「う…うん…」
は、獏良に手を貸してもらいながら起き上がる。
びしょ濡れになってしまった、の制服と身体。
「どこか雨宿りしましょう。えー…っと、あの店先がちょうどいいです。行きましょう」
「うん」
は獏良に引っ張られながら、近くの丁度休業日である店先の屋根の下へと向かった。
そこで獏良は笠を降ろして、持ってるハンカチでの身体と制服を拭った。
しかし小さなハンカチでは限界がある。
獏良は迷ったあげく、のジャケットのボタンに手を掛けた。
突然の獏良の行動に驚きの色を隠せず、動揺しまくりの
獏良はそんなに気が付くと、彼女を安心させる様にふんわりと微笑んで口を開く。
「ちょっと、スミマセン。この制服のジャケットのままでは風邪引いてしまうので……
変わりにボクの着てる羽織りを貸しますね」
「え!?あっ……う…うん…ありがとう………」
獏良はのジャケットを脱がすと、自分の着ているものを着せた。
「これで、家まで何とか凌ぎましょうか。行きましょう、さん」
獏良くんはの手をギュッと力強く握りしめる。
「この手は、絶対離しません!! さんの事、気になってしょうがないのですよ……ボク…」
「………あ…ありがとう…獏良くん…」
は顔を赤らめながらも、その顔が獏良くんに見えないように俯いた。


――そして、と獏良は家へ着いた。
は急いで着替えて、濡れた制服を洗濯カゴへと入れた。
「夕食の支度をしますから、さんはゆっくりしてて下さいね」
獏良にはそう言われたが、任せてばかりはいられないのではお風呂の用意をすることにした。

そして1時間、2時間が過ぎ………
夕ご飯を食べて、お風呂も出た頃………
はパジャマに着替えて寝る所だった。
しかし……

 ……眠れないよぉぉぉ………

別の部屋にいるといっても、獏良のことが気になってなかなか寝付けないでいた。
はベッドから起き上がると、自分の部屋から出た。
ダイニングの方からテレビの音が聞こえる。

 あれ?獏良くん、まだ寝てなかったんだ……

はそのままの格好で、獏良のいるダイニングへ向かった。
案の定、獏良はそこにいた。
どうやら、家計簿を付けているようだった。
ダイニングに入ると獏良はに気付いて声を掛けた。
「あれ?どうしたんですか??まだ、寝付けないみたいですね」
「うん……ちょっと………」
は少しためらいながらも、獏良の傍に寄る。
そして、座ったままの獏良にギュッと抱きついた。
いきなりのの行動に獏良は少し慌てるが、すぐに優しい瞳になりの頭を撫で上げる。
「何かあったら遠慮なく、ボクに言って下さいね……ボクに出来ることであれば何でもしますから」
「………うん……あのね…一つ、お願いしてもいい?」
「どんな事ですか?」
は少し離れ、躊躇いながらも意を決して顔をあげて言い放つ。
「い…一緒に寝て欲しいの……お願い…うぅん、お願いします!!!」
は頭を下げて言う。でもそのまま顔を上げられない。
獏良がどんな表情をしているか、見るのがとっても恐いから………
「……そんな事するなんて… さんらしくないですよ?……顔を上げて下さい……ね?」
「……うん……そうだね………ゴメンナサイ……」
は顔を上げるが、まだ獏良の顔を見るのが恐くって、そのままこの場を立ち去ろうとした。
「待って……さんの好きな……入れますからココに座って……」
そう言って獏良は、をイスに座らせてが入っているコップをキッチンから持ってくるとの前に差し出した。
「………ありがとう…」
しかし、未だ顔が見られない……
獏良はそんなの前に膝を突いて下から見上げる形を取った。
しかし、は別の方向へと顔を背けてしまう。
そんなに、獏良は顔をこちらを向かせるように頬に手を添えた。
自然にの顔は、獏良の方へと向いていく。
さん……大丈夫…。ボク……今日はずっとさんについて見守ってあげますから…
もちろん眠るときも一緒に……ね?」
その言葉を聞き、の顔に安堵の笑みが広がっていく。
「うん……獏良くん、ありがとう」


そして、と獏良は一緒に手を握りしめあって眠った。




   ―――獏良の眠る部屋………

      2人っきりで…………




--- E N D ---

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コメント・・・
自分自身、うわっ……とか言い様がありません。よく、恥ずかしげもなくこんな文章書いたなぁ……自分。それは、いつもか…
今回は、更に何考えてるんだ的な内容ですね……まぁ、ドリー夢ですから……ホントに好き勝ってに書きました。思い残しは……終わっておきながら何ですが、まだあります。はっきり言って、またこんなの書きたいですv
獏良くんの口調がですます調になってるので、何だか八戒の様でした……って言うか、途中で八戒としか思ってなかったような……最遊記のね………
実はこの小説、去年の11月の社員旅行中に仕上げたものなのです。九州仕立てなのですv(←だから何だ…)この時、ドリー夢小説というモノを知らなかったのですが、クッキー機能を使って、名前を入れて呼んでくれるフォームがある事は知っていたのでそれ目指して書いていたものです。まさか、こう言う分野があるとは知らず……
この内容についてなのですが(やっとか…)獏良くん設定---ちょっぴり強引でかつやさしくなのです。女の子相手だしね…やっぱり、ちょっと強引なのが良いですよね?(誰に言ってる…)
こんな家政夫はいないですが、近所の知り会いってことで……ヒロインは中学生っぽいかな?
先生と生徒的な状態ですが……ハッハ〜〜〜!色々矛盾くんな小説ですがその辺は無視して下さい…
ていうか遊戯王とは別世界の方が良いかも……だって獏良くんも学校………ちなみにこのヒロインの両親の設定は某アニメのう○だヒ○ル(宇多田じゃないよ(笑))な感じです。いいなぁ……あの夫婦……
それにしても、長いよ…コメント………
02.06.23