-----それからのオレは、何もかもが必死だった。
…モクバのために……
父は母が死んでからも、毎日毎日、オレ達を思い育ててくれた。
…しかし、その3年後、事故に遭い、そのまま帰らぬ人となってしまった。
---オレは、幸せが恐い………
…………自分の手に力が入る。 壊れそうなくらいに………
---ふと、その手に暖かさを感じる。
オレの手の上に重なった、小さなもう1つの手…それは、オレの大事な弟モクバのものだった。
「……兄サマ…どこか気分が悪いの?」
心配そうにオレを見つめる、その顔……
そんなモクバから、オレは目を反らしていたのか………?
モクバの方に向き直り、そして頭を撫でてやる。
優しく、壊れないように………
「兄サマ……?」
今自分がしている行為は、自分らしくないことくらい解っている。
しかし、モクバにはもう二度と弱みを見せたくない……
----幸せから、逃げるなどという弱みは………
モクバは暫く上目遣いで呆然とオレを見つめていた。
が、ある瞬間顔がパッと明るくなり、…そして、オレに飛びついて来た。
「兄サマ……オレ、幸せだよ。兄サマがどんな兄サマであっても、オレのこと思ってくれなくても、オレずっと大好きだから。きっと生まれた時から、これからもずっと……!!!」
モクバは、しっかりとオレにしがみつく。
---あの時の、光の中での声………
それを忘れかけていたような気がする……
オレは、その言葉が今度はどこかに行ってしまわない様に胸の中にしっかりとしまい込んだ。
弟、モクバを優しく抱きしめながら………………
………ずっと………大好きだから……
ずっと……………ずっと……………………
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