空気が…揺れる? 聞こえるのは……波の音!? 失いかけてた意識から目覚めたという一人の少女。 普段は童実野高校に通う一般の女子高生であった。 遊戯達とは同じクラスであったが、話すこともなくクラスメートとして付き合いがあったくらいだ。 しかし、ある日がデュエルにハマリかけた頃のことだった。 カバンに入れっぱなしだったカードが落ちてしまい、偶然にもそれを遊戯が拾ってくれたこともあって、それから話す機会も増え、帰りも一緒に帰ったりしていた。 しかし今、学校には来ていない。 暫くは『デュエリスト・キングダム』という島へ行っているので、数日間欠席扱いになっている。 …あ〜ぁ…デュエル、したいなぁ…… ボソッと心の中で呟いてみる。 授業中であったが、何だかとってもぼーっとしてしまった。 クラスの友人でデュエルが出来る子がいないわけでもなかったが、にとっては今一つ物足りなかった。 遊戯と対戦していくうちに力をつけてしまったようだ。 キーンコーンカーンコーン…… 授業終了の合図がした。 礼をして帰宅の用意をする。 帰りは友人と何でもない話をしながら帰っていた。 ――え…っと、その後どうしたんだっけ…私……友達と別れてそれで……… 考え込もうとすると頭痛がする。 着ている童実野高校の制服で、学校帰りからそのままココへ来ていることまでは解ったが…… 問題はどうやって、ココまで来たのか… 考えられることは、ただ1つ…… 余り受け入れたくない現実だけど、受け入れない訳にはいかなかった。 …私…誰かに連れてこられたの?…… 考えたくなかったが、それが今ある自分の状況だと判断した。 ギギギ…… 扉が開く音がした。 とっさに逃げを打ち、ベットの縁に捕まる。 扉から人影が見えた。 そうかと思うと、その人影は今のいる部屋の入り口に立って一礼をする。褐色の肌をした、大男だ。 は恐怖心で声にもならなかった…… 私…どうなっちゃうの……… 布団を掴みながら、ガクガクと震えるの身体。 そんなに大男は、その場で少しの微笑みを見せると小さく口を開いた。 「ご安心下さい……私はあなたのお世話に参ったものですから」 その男は、に近寄り安心させるように優しく優しく伝える。 しかし極限状態に陥ってしまったには、そんな男の言葉は届くはずもなかった。 その男がベットにたどり着くと、そっとに手を差し伸べる。 ????? は、目をこすってその男の顔をしっかりと見つめてみた。 身体が大きくて恐い感じがしたが、瞳はとっても優しく、それに引き込まれるように自然と手を差し出していた。 その手に触れたとき、の中で何か込み上げてくるものを感じた。 それと同時に流れそうになる涙を溜めて俯く。我慢するように手に力を入れると小刻みに手が震えてしまった。 「大丈夫です。ココには誰もいませんから…」 男はを優しく包み込む様に、腕とマントで覆い隠した。 俯くと次第に、ひくついて揺れるの肩。 徐々にしゃくり上げて泣き出すと、の背中をゆっくりとさする。 暫くその状態がどれだけ続いただろうか。 落ち着きを取り戻したのか、次第に泣き声も細くなっていき消えていた。 は目をこすり、赤い眼のままそっと上を見上げてみる。 すると男と目が合ってしまい、恥ずかしさの余りその場からベットの上で後ずさってしまった。 男はそんなの反応に、少し焦り気味に話す。 「様…安静にしていて下さい…今動くとアナタの御身体が壊れてしまいますから……」 ……こ…壊れるって??? 疑問を投げ掛けるような眼でその大男を見つめる。 するとその男は、崩れた布団を直して寝かせられるように配置すると、を抱き上げて布団の中へと戻した。 「………あの…あなたは?」 男はハッとして口を開く。 「失礼しました、私の名はリシド。ある一族に仕えている者であります」 に深々と一礼する。 そんなリシドにニコリと微笑む。 「私は、と申します…そう言えば、リシドさん私の名前、知っていましたね。何故知っていたのですか?」 リシドは顔を顰めると、言いにくそうに口を開く。 「…それは、あるお方に教えて頂いたからです。…すみません、それ以上は言うことは私の口からは出来ません」 リシドは更に深々と頭を下げてにわびる。 そんなリシドには焦る。 「あ、頭を上げて下さい!そんなことされると私…」 リシドの肩に手を添えて、顔を上げさせようとする。 なにやってるんだろ、私! こんな事してる場合じゃないのに…… は意を決して顔を上げると、リシドに向けて質問をした。 「あの…私、どうやってここまで来たか判らないのですが、何か知ってますか!? 知ってたら教えてください。お願いします!!」 起き上がって、リシドに縋り付くように訴える。 「それは……」 言い出せずにいるリシド。 「……やっぱり、言えないですよね……」 は俯いてリシドからそっと離れる。 「……様」 カツ…カツ… その時規則正しい足音が聞こえた。 足音はとリシドのいるこの部屋の前で止まった。 扉がノックもなく、ガチャリと音を立てて開かれた。 そこから現れた一人の少年。 キツイ目つきでリシドを睨む。 「リシド…もう良い。ここからはボクが彼女の相手をする」 「はい…」 一言言葉を返すと、リシドはその場から去っていった。 リシドと同じ褐色の肌をした少年。 ベッドの隣に立ち、を見下すように見つめる。 その瞳は、リシドのような優しさを秘めた瞳とはまた違ったっものだった。 …恐怖、憎悪、憎しみ… その様な言葉が詰まっていそうな瞳をしていた。 は恐くなってぎゅっと布団を握り締める。 自分の足を守ろうと手で引き寄せた。その為、短めのスカートがもう少しでまくれ上がりそうになる。 彼は、そんなの様子を察してか、顔を険しくして更に近寄る。 …こ…恐い!!! ……助けて… 「遊戯くん…助けて……」 は知らず知らずのうちに瞳から涙を流して、その名を呼んでいた。 ギュッと目をつぶって、吸い込まれそうになる彼の瞳を見ないようにした。 「大丈夫だよ。顔を上げて、さん」 声が彼のほうから聞こえた。 「…え?…」 彼は、の頬にそっと手を添えた。 それに反応し、ゆっくり顔を上げる。 先程までとは違う優しい瞳。 「あ…あの……」 言葉が震えて、詰まってしまう。すると、その少年は少しの微笑みを見せて口を開く。 「初めまして、さん。ボクの名前はナム、君が遊戯くんの友達のさんだね?」 コクリと頷く。 「遊戯くんの友達であるさんに、ボクからお願いがあるんだ」 は首を傾げると、構築済みと思われるM&Wのカードを持っての前に立ってそれを差し出す。 「ボクとデュエルをしてくれないかい?」 一方的に話を進められるが、逆らうことが恐くて頷いてしまった。 そんなの姿を見て、彼は優しく微笑み、『ありがとう』と一言礼を言う。 ナムは机を用意し、デュエルが出来る状態にした。 「デュエル!!」 ナムのその言葉を合図に進められる決闘。 しかしはそれどころでは無かった。 真剣なナムの顔をじっと見つめてみた。 ……私…この子に連れてこられたの?? 今のナムからは無邪気にカードゲームを楽しむ、子供のような雰囲気さえ感じ取られた。 は考えを否定するように、小さくを首を振る。 ううん…違う、ナムくんはきっと違う。 ………そう思いたい… 「…さん?君のターンだよ、どうしたんだい?」 「わぁ…!!」 ぼーっと考え込んでいたは、突然のナムからの声に驚き、後退りをした。 カードがバラバラと落ち、運悪く後ろについたその手はすでにベットの上では無かった。 頭から滑り落ちるの身体。 硬く目をつぶり、次の衝撃を覚悟して身体を硬直させる。 「危ない!!!」 ……その衝撃は…来なかった。 何とか、ナムがの腕をつかみ取っていた。 「大丈夫かい、さん?」 「うん、ありがとうナムくん」 安心して体制を立て直そうとする 。しかしその瞬間、ある事に気付く。 今の体制――それは、 の股の間から腕を引っ張っているという奇妙な光景…つまり、ナムからはスカートの中が丸見えなのであった。 >>>イメージ 咄嗟のことでナムは手を差し出したが、それに気付いて赤い顔をしながら眼をそこから離せなくなっていた。 「キャ……!!!」 は勢い良くナムから腕を離し、スカートを押さえるとそのまま…… ゴス…… 何とも鈍い音がその部屋に響いた。 ベットから真っ逆さまに落ちたのである。 「わっ…さん!!!」 「…へへへ……」 はスカートを押さえたまま、ニヘラッと笑みを作りその場を何とかやり過ごした。 「ゴ…ゴメン……ボク……」 ナムは本当にすまなそうに、ションボリとして謝った。 「ううん、私が不注意だったからいけなかったの」 そう言った にナムは首を横に振り、抱き上げてベットへと戻す。 は足下を隠すように 布団を掛ける。 「本当にゴメン…ボク、どうしてもデュエルをさんとやりたかったんだ…」 ベットの横で膝を突いてを見つめる。 「でも、ボク無理させてたんだね」 「イイよ…さっきのはナムくんが悪いわけじゃないし……」 そのの台詞を聞いて、ナムは意を決したようにキッと顔をあげて立ち上がると、彼女を押さえつけるように上から見つめる。 「違う!! ボクの言いたいことは!!!!!」 ナムは下瞼を震わせ、潤む瞳を強ばらせた。 「ナムく……!」 の台詞は途中で途切れた。 彼女の唇は、ナムの唇によって閉ざされたからだ。 「その言い方は……もう…やめて…」 突然の口付けを後悔するようにゆっくりと唇を離すと、ナムはの身体を抱き締めて、弱ったような力の無い声で言う。 ナムのいきなりの行動に動揺しつつも彼の消え入りそうな声が気にかかり、は彼に問い掛けた。 「どうしたの? ナムくん」 がその言葉を言うと同時に、ナムは立ち上がって掛けてあった布団をはぎ取り、を抱きかかえた。 「来るんだ、!!!!」 突然の呼び捨てに、の心はドキリとした。 そんなにお構いなく、ナムは彼女を抱きかかえたままの状態でその部屋から飛び出した。 …私…何処に連れてかれるの? 不安なまま、連れ去られるの顔に緊張の色が混じる。 ナムはそんなを知ってか知らずか、船の外へと連れ出した。 にとって、ここに来てから初めて見せられた外の景色。 一面の海………うみ………ウミ………………… ナムに降ろしてもらうと、数歩歩きガクリと膝を突く。 遠くに見える街…あれはきっと童見野町だろう。 やっぱりココは私の知らない場所なんだ… 今までが普通に暮らしていた街…… しかしそれは自分の目に入ってくるくらいの離れた場所にいた。 それを眼にした途端、現実に引き戻されたような感覚に見舞われた。 縁まで進むと手すりに捕まり、振り向かずに問う。 「ねぇ…ナムくん……私をここまで連れてきたのって……ナムくんでしょ?」 ナムは少しの間を置き、呼吸を調えるとの隣に立つ。 「…うん。そう、を連れてきたのはこのボク……でもそのためにボクは君を壊しそうになった…」 辛そうに俯いたままで顔を顰める。 「ボクは、洗脳と言う術が使える。その術でココまで連れてきたんだ。だけど、君にはこの術に耐えられなくって、途中意識が戻らなくなってしまったんだ…」 は信じられないといった表情でマリクを見つめる。 「そんな……私…ナムくんに操られてココまで来てたなんて…どうして…?ヒドイ…ヒドイよ!! 私をみんなの所に帰して…元の街へ戻して……」 はナムに縋り付くように掴みかかり、その場で泣き崩れた。 そんなをそっと抱き締め、耳元で囁くようにさらに話し出す。 「ボクは…君のことが知りたかった……初めは遊戯達のことを調べていたんだ…ボクの宿敵と決めた相手だから…その時の存在を知った…君とデュエルをしている遊戯が羨ましく…憎らしく感じてしまった……」 ナムの腕の力が次第に強くなっていくのを感じた。 の瞳はその言葉に驚きよりも、安心感が少しずつ生まれていた。 「ゴメン…、ゴメン!! 君を連れてきてしまった事……後悔してる…ボク、 が壊れそうになって、初めて気が付いたんだ。こんな気持ちになるなんて…気付くハズじゃなかったのに!!! でも…好きなんだ、 のこと…どうしようもなく好きになってしまったんだ!!!」 ナムは眼からぼろぼろと涙を零し、に叫び続ける。 「ナムくん……」 その言葉にナムは首を横に振り、顔をあげた。 「には本当のことが言いたい……『ナム』は違う…とっさに付けた名前なんだ。本当の名前は『マリク』って言うんだ……」 「マ…リク…くん?」 その名を呼ばれた途端、マリクは顔をほころばしてさらにきつくを抱き締めた。 マリクくん…… は次第に自分の置かれている立場より、マリクの置かれている立場を気にせずにはいられなくなった。 そして何よりも、純粋に自分をこんなにも好きだと言ってくれて、その上すべてを打ち明けてくれた。 そんなマリクを見ていたら、先程までの彼への憎しみも一切消え去ってしまった。 同時にの胸の中で、小さな炎が灯ったような感覚に襲われた。少しマリクから離れてゆっくりと話し出す。 「ねぇ…マリクくん…アナタは私から大切なものを奪ったんだよ……」 マリクはその言葉に小さく頷く。 「……そうだよね…ボクは、を連れ去ってきてしまった…それは、どんなに謝っても許される事じゃないこと位解ってる……」 はそのマリクの言葉に首を横に振る。 「ううん、そうじゃない……マリクくんの所為だからね…好きなんて言われたの、生まれて初めてなんだから……」 マリクの腕をキュッと握リ締めて、自分の胸元に持っていく。 「それにもう一つ、女の子にとっての初めてのkiss…」 そこまで言ってはひとつ間を置き、 「大切なモノなんだから…」 と顔を赤らめて上目使いでマリクを見つめる。 マリクはそんなのそんな態度に少しうろたえつつも、声を震わせて問う。 「酷いこと…大切なものを奪ってしまったというのに…はそんなボクを許してくれないよね…?」 しかしは首を横に振り、眼をそっと閉じた。 「…解らないの…私…許せないと思ってたのに…でも今は…」 俯いたまま呟くように、言葉を零す。 「許してあげる…」 その言葉を聞いてマリクは顔を腕で拭うと、に手を伸ばし引っ張るように自分の方へと引きつける。 「……ボク、君をあの童実野町へ帰してあげる。…それが今のボクに出来る一番の償いなんだ。ここで待ってて、リシドに頼んでくる」 そう言ってマリクは船室へと戻ってしまった。 は1人、船の上で残る。 フフ… 自然と笑いが込み上げてくる。 マリク…その人物に魅かれてしまった自分… あんなに恐くて逃げ出したい思いでイッパイだったのに、今は違う。 子供のように無邪気で、純粋で、縋り付くような瞳…… はそれに自然と魅きつけられていた。 「マリクくん…」 その名を呼んでみた。するとホワッと暖かいものが心の中で過った。 もう一度、言ってみたくなった。今はマリクはいないのでもう1度だけ…… 「マリクくん……大好き…」 ありったけの思いを込めて、その言葉に今の気持ちのすべてを乗せた。 「……!?」 突然のマリクの声。船室へ行ってしまった彼が、今ココにいる。 い…今の聞かれてた!!!!? 振り向き、手すりに持たれるとそこにはマリクが眼を真ん丸くして立っていた。 その瞬間は手すりから手を滑らせ、海の方へと落ちそうになった。 「あ…危ない、!!!」 素早くの腕をキャッチするマリク。 「あ…ありがとう」 「そそっかしいなぁ…は」 照れ隠しに少し苦笑いを見せる。 「ねぇ、それよりボクの事『くん』付けしなくてイイよ…その…言いにくいだろ?」 …確かに言いにくいかも…… 「解ったわ、マリク」 あっさりと言ってくれるに対して、マリクはほんのり頬を赤らめた。 「どうしたの?」 首を傾げて問うと、マリクは我に返ったように首を振り、何かから振り切るように船の先頭の方へとダッシュすると、その町の方へ指を差し示した。 「もうすぐだ…もうすぐ童実野町だよ。 をこの街へ帰してあげられるから!」 マリクは前を向いたままじっと止まってしまった。 …マリク? はマリクの傍に近寄ると肩を小刻みに震わせていた。 こちらを振り向きはしなかったが、の気配に気付いてマリクは口を開く。 「…リシドに頼んできたんだ、童実野町に船を降ろしてくれって… …、君をこんな目に合わせたボクを何で恨んでないんだい?」 言い出しにくそうに、真剣に問うマリク。 は柔らかく微笑むと、その小さな口から確かな言葉がマリクへ伝わる。 「恨みなんて無いよ……もう、そんなものどうでもいい…私、マリクのこと……… 大好き……だから」 そう言うとはマリクの胸にもたれ掛かる。そんな彼女を支えるように、マリクの手が背中に回される。 「…ボクは君を何処までも連れ去っていきたい……」 は顔を上げ、ニコリと微笑むと言葉を返した。 「…私も…マリクにだったら連れ去られてもいい…」 返ってきた言葉に、マリクは驚きを隠せずにの瞳を見つめる。 「本当にイイのかい? 本当にボク、を連れていってしまうよ」 「……うん。私、マリクにずっと付いていきたいの…」 の告白に、マリクは優しい笑みを見せ、彼女の顔に自分の顔を近付け、そっと口付けをする。 先程のモノとはまた違う、優しい口付け… 暫くの間、流れる甘い甘い空気。誰も寄せ付けない、そんな雰囲気が漂った。 しかしそれは船の到着とともに遮られた。 ガタン! 大きな音と共に離れる2人。どうやら埠頭に付いたようだ。 しかしそれ所ではなかった。 「わっ…わっ…」 …トスン…… バランスを崩しては尻餅を付いてしまった。 「いたたたぁ……」 「大丈夫? …これで3回目だね」 マリクがクスッと笑うと、はプクッと膨れっ面になった。 「どーせ私はドジですよ!!」 いじけながらも、痛みを堪えてその場を立ち上がる。 その瞬間背後からマリクに抱きつかれた。 「でも、ボクはそんなが大好きだから…」 耳元で囁かれて、は顔を真っ赤にさせる。 マリクの顔が見えず、どうしようもなくやりきれない思いが走る。 …やっぱり私、その言葉に弱いよ〜〜… マリクはそんなの気持ちを察したのか、さらに追い討ちをかけるように囁く。 「のこと、大好きだからずっとボクの傍にいて欲しい……」 …そんな事言われたら、私…… は立つ気力さえ無くなり、マリクの腕からずり落ちるようにその場に座り込んだ。 そんなにマリクはしゃがみ込んでクスクスと笑う。 「、可愛い……」 「…もう………」 は顔を赤らめて、マリクを突っついた。 「それより、これから君を好きなところに連れていってあげる!」 「本当?」 「ボク、の望む所なら何処へでも連れていくよ」 マリクはスッと立ち上がり、の前へ手を差し出す。まるで、王子様のように… 「さっ、おいで。 」 「うん…」 はそっとマリクに手を差し延べた。>>>イメージ するとマリクはその差し伸べた手を取り、更に引き寄せると を抱き上げ、そのまま船から降りた。 そこでは黒いマントを羽織った数人の男とリシドが、バイクを用意していた。 数人の黒いマントの男は眼を白黒させてその状況を見つめるが、リシドはいたって冷静だった。 はリシドの方に振り向くと軽く会釈をする。またリシドも に向かって一礼をした。 「マリク様、今日はどちらへ…」 「リシド、今日は帰らないから」 「は…解りました」 マリクは、リシドに了解をとってバイクに駆け寄る。 をバイクの後部座席に座らせ、ヘルメットをかぶせる。 又、自分も身に付けるとバイクにまたがった。 「ボクに捕まって。じゃあ、行くよ。 の好きな場所へ!」 「…うん」 は落ちないようにマリクの腰に腕を回して背中にもたれる。 バイクのエンジン音は次第に大きくなっていき、少しずつ速度を上げていく。 「もっとスピード上げるから、しっかり捕まっててね」 「判ったわ」 するとそれと同時にバイクは更にスピードを上げる。 ………童実野町の中、まもなく辺りがデュエリストだらけになるその直前のことだった。 |
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02.05.01(05.22修正)
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