--- Dreaming Love・・・---
「セーンパイ!!」

  ………。

「ねぇ、先輩ってば!!!」

  ………何だぁ?誰か呼ばれているぞ?

「マリク先輩ってば、起きて下さいよ!!!!」

  ……オイオイ…呼んでいたのは、オレだったのか………
  しょうがないな、眠いが起きてやるとするか。

ゆっくり目を開けると目の前には一人の少女、 の姿があった。

  ふぅ〜…それにしても、オレの安眠妨害をするとはね……
  こいつだけだよ…オレはお前が苦手だね………

「やっと起きたぁ〜〜〜!!! マリク先輩、学校から離れた場所で寝てたら学校のチャイム……聞こえないかも知れないじゃないですか!?」
そう………マリクは、昼放課に学校から少し離れた広場に来ていた。
彼にとって唯一のんびりできる、まさに楽園………だったハズだが……… は見つけてしまったのだ。
『マリク先輩のことは、私、なぁ〜〜んでも解るんだから!』
そう言う彼女に、マリクは一つ溜め息を漏らす。

  ………しかし、お前もなんでオレの所に来るんだよ………?

「オレはな?今、眠いんだ………」
その様に言うマリクを見かねて、 は彼の腕をぐいっと引っ張る。
「何言ってるんですか!行きますよ。授業、始まっちゃうじゃないですか!?」
「………ッチ……解ったよ……」
起きると、 に腕を引っ張られながら、学校へと向かった。


  ― という人物 ―
マリクとは1つ違いの高1なのだ。
だが、ナゼかいつの間にやらマリクに付きまとうようになっていた。

  そうだ、ナゼなんだ??オレが、何かしたのか??
  …いや……そんなハズはないと思うのだが………

完全に身に覚えが無く、困惑していると から次の言葉がかかる。
「今日の帰りこそ、待っていてもらいますからね?じゃなきゃ…また………
 …はう……!」
その先を言わせないように、マリクは の背後から腕を回して口元を押さえつけた。
「解ったよ……今日の帰り、校門の所で待っていれば良いんだな?」
口元を押さえられながらも、嬉しそうにコクコクと頷く
マリクが口元から手を放すと同時に、 は彼の額に人差し指でチョンッと突っついた。
「さっすが、マリク先輩!解ってるんですね!?一緒に帰りましょうね?マリクセンパイv」
はそれだけ言うと、放課終了と共に手を振りながら自分の教室に戻っていった。

ココまで、しつこいのには訳があったのだ。
実は、前にこの約束をされたときに無視して帰ってしまった時があったのだ。
そうしたらその次の日、教室の方まで来て『マリク先輩!昨日、待っててって言ったのに〜〜』と散々教室で怒鳴り散らしたという事件があった。
それからのマリクは……どんな目にあったかは言うまでもなく……
所々でうわさする声を背に、日々学校生活を送っていた。
それに懲りて、無断帰宅はしないようにした。

  …まぁイイ……オレがこのまま、興味無い様な態度を取り続ければ
  勝手に身を引いてくれるだろうさ……

しかし、おかしいことに日増しに激しく付きまとわれる結果になっていた。
  
  解らん……
  オッと…そろそろ授業が始まるぜ…久々にマトモに受けてやるかな?(←オイって…)



―――そして、授業が終わり教科書とノートを机にしまうと、軽い学生カバンをもって教室を出た。

  …さてと……しょうがないな…行ってやるとするか…

面倒くさそうに足を動かしながら、約束の校門へと向かった。



―――しかし、 はその場所にはいなかった。

  …おやおや、まぁ……待ってやろうじゃないか………

マリクは校門を出たところで座り込み、 が来るのをジッと待つことにした。


   ボ〜〜〜〜〜〜………

   ボ〜〜〜〜〜〜………


次々と流れるように校門から出ていくヤツラ。
しかし、その中に の姿はなかった。


   ボ〜〜〜〜〜〜………

   ボ〜〜〜〜〜〜………


その時だった。何やら後ろの方で聞き覚えがある声が聞こえ、振り向いてみた。
「じゃあ、城之内先輩。ありがとうございました!!!」

  ……ん?何だぁ?何故、隣のクラスの城之内といるんだ?

「いいって、それよりよ?良かったら家まで送っていこうか?」
「あの…お気持ちは嬉しいのですが………」
は、そう言ってマリクのいる方へ向こうとする。
しかし、完全に向き合う前に彼女の肩の上に手を置いた。
がそれに気がついて振り向くと、肩に乗っている彼の手を両手でギュッと握る。
「マリク先輩!やっぱり待ってて下さったんですね!!! 良かったぁ〜、もう、行っちゃったかなぁと思ってたんですけど……そんなわけ無いですよね!」
「……………23分37秒待った…………」
「あぁぁぁぁ〜〜〜……ゴメンナサァ〜イ、先輩!係の仕事に手間取っちゃって…城之内先輩に手伝ってもらってたんです。ネッ、城之内先輩!!」
城之内の方を見ると、呆然とした面持ちで2人のやり取りを見つめていた。
の声に反応し、正気を取り戻した様に首を振る城之内。
「………あ…あぁ…プリントの山が重そうだったから、運ぶのを手伝ってやったんだ。
………それにしてもよ………」
少し言いにくそうに、口ごもりながら次の言葉を続ける。
「…………お前ら…ひょっとして、付き合ってんの???」
その言葉に驚き、 は言葉を失いながら困ったように小声を出す。
「……っと……あの………」
それに対して、マリクは平然な顔つきで話す。
「いいや……違うぜ……」
キッパリと言うマリクに、 は横からそんな彼をジッと見つめる。


しばらくの沈黙………


「そっか……」
その沈黙を破って、最初に口を開いたのは城之内だった。
「ということは、 の隣は、今開いている……というワケだな?」
「エッ!?」
突然の城之内の発言。
は驚きの声を上げて、顔を城之内の方へ向けた。

しかし、それでもマリクは黙ったまま………

それに見かねた城之内は次の言葉を続けた。
「じゃあ、 。オレが送っていくぜ!」
「…エッ?…………エッ!?」
何だか分からないといった表情をして、城之内に手を引っ張られる
そんな2人に、マリクは聞こえるくらいの大きさで声を出す。
「…………行くがいいさ…オレはな……オレは…」
その先が言えなかった。
マリクは振り返りもせずに、 と城之内とは逆方向へと歩いていった。

  ……言いたかった…だけど、言えなかった……

  ……思っていた…だけど、それだけだった……

「フッ……」
知らずに鼻で笑っていた。

  ……オレはな…お前が……苦手だったんだ……

これ以外のことは、思ってもなかった。
しかし言うことが出来なかった。

  ……何でなんだ…?

頭の中で葛藤し続ける。
だが、足はそんな思いに反して真っ直ぐに進んでいる。

  ………ッチ……

少し我に返ってみる。

  ……一体、何でこんな事考えてんだ?
  オレらしくもない……

今、頭にあることを全て振り払い、家へと向かった。


―――家の前、扉を開けてそのまま入った。
その開けた音に反応して、姉であるイシズが部屋から出てきた。
「あっ、お帰りなさい。マリク」
「………ただいま………」
そんなマリクの態度に、イシズは彼の元によって何かを感じたかの様に表情を変える。
「マリク………今日、夕食は?」
まるで彼のことが解っているかの様に聞く。
「………今日は、いらない……」
当たり前の様に言葉を返し、部屋へと向かう。
イシズからの視線に耐えながら、2階にある自分の部屋へと向かった。

―――部屋に入ると、そのまま何もせずにベットの上にゴロンと寝転がる。

  何やってんだ………オレ………

おでこの上に腕を乗せて、天井を見上げてみる。
  
  …これ以上、 とかかわらないで済むさ……
  ――これであいつもきっと……

そこまで思うと枕に顔を伏せる。

  何も考えたくない………
  頭の中をいつもの様に真っ黒に染めてやる………

その時だった。
温かな感触が、頭の上でかぶさった。
それに反応し、マリクは片目だけ開けてそちらを見てみる。
そこには、イシズの姿。
彼女は優しい微笑みを見せながら、マリクの頭を擦っていた。
「マリク……また何かあったのね?……姉さんで良かったら、相談に乗るわよ?」
しかし彼は、そんなイシズの質問に対して何も言えず、ただ沈黙が続いた………

暫くして、マリクが再びイシズに向いた顔を枕にうずめると話し出した。
「……オレはな?…姉上に、頼るなんて……出来ねぇよ…
 でもな……今ある事、すべてを消すことは簡単なのさ………」
イシズはそんなマリクの返答に、少し顔を険しくすると彼の腕を掴んで無理矢理起こした。
そしてマリクの両手を自分の両手でギュッと握ると、厳しい表情で彼を睨む。
「マリク!! 何かあったのかは解らないけど、そんな事を言ってはダメよ!!!」
怒っている様で、どこか心配そうな顔つきのイシズ。
しかし、そんな思いを受け止めようともせずに顔を俯せて、視線を横にずらす。
「…………マリク………」
彼女が少し漏らした言葉を振り払って手をそっと退かすと、ベットから立ち上がってその部屋から出ようと扉へ向かった。
その部屋から出る直前、マリクは少しだけ振り返りイシズの方を見てみる。
その顔はいつも強気だが、姉として見せない弱気な表情を今は見せている……まるで……
「………… ……」

思わず、ぽそっとその言葉を口から零してしまった。
慌てて口を塞いでイシズの方を見てみるが、時はすでに遅かった。
予想通り、彼女の瞳は驚きの表情で、目を完全に見開いている。

  ……ッチ……オレをそんな目で見るんじゃねぇ!

怒りというよりも恥ずかしさの方が勝り、耐えきれずに部屋を早々に出ることにした。
しかし、それは出来なかった。
イシズの手によって、マリクの腕が握られたからだ。
「マリク……待って!」
「………何だよ……姉上……」
面倒くさそうに、背を向けたまま顔だけそちらへチラリと向ける。
暫くイシズはマリクの顔をじっと見つめ、そしてそっと背中に触れた。
「マリク……行ってらっしゃい」
にこりと微笑みながらそのまま、その背中を押した。
そんな彼女の顔を見てみると、優しい微笑みに溢れていた。
それだけでマリクはイシズの今の気持ちが、十分に解った。

  …だがな………

「…姉上…何か勘違いしている様だが………」
イシズの考えている事を、否定しようとした。
しかし言葉はそれ以上出す事は出来なかった。
そして、そのまま翻って部屋を出た。

  どうしたんだ?オレ………
  手が熱くなってきた……
  自分が何を考えているか解らない……

  ……オレが今考えられる事、それは……………

頭の中で熱い想いが過る。
マリクはその場を立ち去りつつ、後ろから今の自分の状況を何も言わずに静かに見つめる姉の視線を真っ直ぐに受けながら、この家を出た。

  オレは今思う……
  どんな気持ちになろうが、オレは に会う……
  いや……
  会ってみせるさ…………

しかし、その瞬間ある顔がマリクの脳裏に過る。
そう、城之内だ。

  オレが去った後、どうしたんだ?
  いや、それ以前にヤツと初めて会ったとは思えないほどに親しげだった様だが……

繰り返すそんな想いが、マリクの心をより苛立たせた。
しかし、それを振り切るように足を速めて のいる家へと向かう。

  ―今ごろどうしているだろうか………
  …いいさ……まぁ、会えば解ることさ………

マリクはこれ以上考えることをやめて、ひたすら の家に向けて足を進めた。




―――そして、 の家の前………
マリクは、インターホンに手を伸ばす。
しかしその手は寸前で止まり、その手をあごの下へ持っていく。

  ――もし…オレの事を、拒否したら………

マリクは、そう思うと同時に自分の前にあるコンクリートの塀を拳で力イッパイ殴る。

手が壊れそうになるくらいに………

そこからにじみ出る血………
それをじっと見つめると、その場で塀を背にしてゆっくりと座り込んだ。
その時マリクの上から、一枚の葉が揺らぎながら落ちてきた。
上を見上げてみると、ガッシリとした大木………
どうやら の家の庭のものらしいが………
その時マリクはある事を考えついた。








 ――― 一方、 の方はと言えば………
マリクと別れ、学校から城之内と共に帰っていった。
今にも枯れてしまいそうな位、しおん……とした彼女の横顔。
「……… ?」
城之内は、その状況に堪え兼ねて口を開いた。
その声に反応して、慌てて顔を城之内の方へ向けて笑顔を見せる。
「な……なぁに、城之内先輩!!!」
上機嫌の様に振る舞うがあからさまだ。
そんな が見ていられなくて、城之内は彼女の前に回り込んでガシリと両肩を掴んだ。
はそんな状況に付いていけずに狼狽える。
「……… …率直に聞いていいか?」
城之内のその問いに、戸惑いながらもコクリと頷く。
言い出しにくそうに少しだけ顔を顰める城之内。
「あのよ………お前、マリクの事………好きだろ?」
はその問いに驚きの色を見せ彼を見つめると、ゆっくり頷く。
「……………うん……でも…でもね…
 きっと……先輩は私の事………」
の瞳から次第に流れ出る涙。
そう、 は今まで自分からアピールを続けていたのだ。
振り向いてもらえるまで一生懸命、必要以上に元気な態度を取り続けていた。
しかし、今はそれ所では無くなってしまった。
いつの間にか城之内にもたれ掛かって止まらない涙を流し、しゃくり上げながら泣いていた。
そんな を優しく包み込むようにそっと抱きしめる。
……今はオレの元にいろよ……………
………いや……ずっといてもいいん……だぜ?」
そっと囁くように の耳元で言う。
「じょ…城之内先輩……!」
しかし、 は涙を拭うと肩をひくつかせながらも何とか首を横に振る。
「うぅん……ゴメンナサイ。心配掛けさせちゃったらいけませんね。私、大丈夫ですから…
………でも、少しお話を聞いてもらってもいいですか?」
城之内は、 のその問いに黙って頷いた。

にとって城之内は、掛け替えのなく、何でも話せて、気も許せてしまう…そんな人物であった。
城之内に、今の自分の想いをありったけにぶつけてみた。

  マリクの事が好きなこと……
   でも頑張っても、振り向いてくれないかもしれない……
    いつも寂しそうににしているマリク先輩………
     だから、彼女になれなくても、
      一緒にいたいって思ってる………

城之内は、 の言葉を1つ漏らさずに聞き、今の彼女の気持ちを真っ直ぐに受けとめた。
が話終わり、一息ついたところで城之内が口を開いた。
「あのよ? が、そう思ってるんなら、オレは何も言わないぜ?でもな、もし…
 ……もし、どうにもならなかったりしたら、オレの元に来るんだゾ?
 オレが…出来るかぎり、元気づかせてやるからヨ!」
「はい、ありがとうございます!!
 城之内先輩って、何だかお兄ちゃんみたいですね!
 本当に私のお兄ちゃんだったら良かったのになぁ……」
夢見るような眼差しで、城之内を見つめる
城之内は複雑な気持ちになりながら照れて、頬をポリポリと掻く。
「ハハッ…そ…そりゃ、嬉しいような…悲しいような……」
しゃべる言葉を小さくさせながら言う。
「エッ!?最後、何て言ったの?よく聞き取れなかったケド……」
「い……いいんだ。それよりよ? 、無理だけはするなよな?
本当にダメだと思ったら、オレの元に来いよ?」
「大丈夫ですよ!マリク先輩は優しいからv」
「…や…優しいねぇ………」
城之内は の言葉に半信半疑になりながら首をかしげて彼女を見つめる。
そんな城之内に向かって、くすくす笑う

―――そして、それから数分後………
「じゃあ、城之内先輩。ここまで送って下さってありがとうございます!!」
「おう!いいってことよ。じゃあな、頑張れよ!!」
城之内は目の前で拳を作って、ガッツポーズを決める。
そんな城之内に対して、 は笑顔で元気よく答える。
「ハイ!私、くじけませんから!! 本当に今日はありがとうございます、では、また明日!」
そう言って は、城之内と別れた。
そしてそのまま帰路に着いた。


家に着くと、 はそのまま駆け込むように真っ直ぐ自分の部屋に行き、ベットに顔を俯せる。

  ……明日……マリク先輩にどう会おう………
  ううん、いつもの私でいればイイのよ!
  いつもの元気で、マリク先輩の傍に着いていれば……

は横になり、壁とにらめっこした状態になる。

  ……ガンバレ…… !!!

は心の中で、自分を応援してみせた。
しかし、それが逆に悲しみになり、次第に目から涙が溢れてきた。

  ダメ!! 私はいつも元気でいなきゃいけないんだから!!!

そんなことをぐるぐると考えている内に、辺りが暗くなっていることに気がついた。
時間は既に8時。
カーテンを閉めていたので時間の流れが解らなかったのだ。
電気をつけようとスイッチのある扉の方へとそろそろと壁をつたいながら歩いていく。
やっと手を延ばせば届く所まで行き着いた。

  ……パチッ!
  ………………トン………

今スイッチの音と一緒に何かが聞こえた。
は首を傾げながらも、再びベットの方へ戻る。

  トントントン……

やっぱり何かの音が聞こえる。

  …ドン…トントン…カンッ……

何かがぶつかるような音。
外から聞こえる。
………しかも、すぐ近くから………………
は、恐る恐るカーテンを開けて覗いてみる。

  ……誰かいるの??

目を凝らして、じっと見つめてみた。
その瞬間、 はとんでもないものを見たかの様にカーテンを開き、驚きの声を上げる。
「マリク先輩!!!!?」
そう、そこにはマリクの姿があった。何とマリクは の家の庭に植え付けられている木によじ登って、幹に捕まっていた。
「………よっ……」
片手を挙げて言うマリクに対し、 は呆気にとられながらも言葉を返す。
「…マ…マリク先輩!!! 何て所にいるんですか!玄関から入れば良かったのに……」
「……入りづらかったんだ……
 それによ…お前の顔が、早く見たかったからよ……」
少し照れながら言うマリクの見慣れない姿を見て、 は驚きながらも嬉しくって口元を手で押さえる。
「……マリク先輩!! でも…あの……」
は言葉を続けようとするが、マリクはそれを先に読んで口を開く。
「……そうなんだ、ここまで登ったはいいがここから先へ行けなくなってしまったんだ…
 ……だから、こう……」
マリクはベランダのフェンスに足を伸ばして、コンッと軽く一蹴りする。
「………したんだケドよ…?…スマン……」
少し俯いて詫びるマリクの事もそうだが、それ以上にわざわざ自分に会いに来てくれたその気持ちが嬉しくって涙が出そうになった。
「オット…泣くなよ?今、そっちに行ってやるからよ……」
マリクは何とか渡ろうと、力いっぱいに手を伸ばした。
しかし、後数センチの所で届かなかった。
そんな一生懸命なマリクの姿を見て、 はとっても嬉しく思えてならなかった。
「ダメだ…………あきらめて、玄関からお邪魔させてもらうとするよ……」
そう言って、木を下りかけた時だった。
「待って下さい、私がそちらへ行きます!」
は、フェンスに足をかける。
それにはマリクも慌てて止めに入る。
「待て!それはやめろ?落ちるゾ!!」
「大丈夫ですよ、じゃあ、行きますよ?」
その姿にマリクはため息をつき、片手を差し出す。
「………しょうがないな…ホラ、この手に掴まれよ。 ?」
マリクの一言に、 は嬉しく思いながらその手に捕まり、一息ついてピョンッと彼の方へ飛び移った。
そして、マリクに抱きかかえられると彼の顔を確かめる様に上を向く。
「マリク先輩……?本当に、マリク先輩ですよね。
いつもムスッとしてて、ねむそーな顔してて、やる気も無さそーな顔してるマリク先輩ですよね???」
はその様な事を言いながら、ペタペタとマリクの顔を触り何度も確かめる。
「………お前、とんでもない事言うな………
 否定はしないケドよ………」
そんなマリクに、 はクスッと笑う。
「なんか、先輩……変わりましたね?
何かあったんですか?」
マリクは の方を向き、真剣な顔で見つめる。
「………何もないよ……あったとしたら、原因は 、お前だからな……?」
「エッ、何で私の所為なんですか!?」
「それはな…こういう事だからだ………」
マリクは の額に顔を近づけるとそっと口付けをする。
顔を離すと、 はビックリしたように目を大きく見開いていた。
「マ…マリク先輩!……これって…………」
マリクはニヤリと笑みを浮かべると、空を見上げてもう一言。
「それとよ、昼に言った事は撤回だ。
 ……オレ達は付き合ってるんだ……そうだろ?」
そう言って の方へ向き、彼女の同意を求める。
その言葉に、 は嬉しすぎて半泣き状態で答える。
「……は……ハイ!! 私、マリク先輩とずっと前から付き合ってるんです!!!
何処までも先輩に付いていきますから!!!!」
「ず……ずっと前からかは知らないが……まぁ、いい。そう言うことだ………」
マリクは少し引っ掛かりながらも、顔を赤らめる。
しかし、それ以外にもう1つ話すことがあった。
「……あの……よ?オレ、お前の事、…… って呼ぶ事にしたんだ……」
「あっ、そうそう!私、気になってたんです。
 マリク先輩に名前で読んでもらえるなんて、夢みたいです〜〜」
夢見るモードに入った に、マリクは言いにくそうに次の言葉を続ける。
「……そ…そこでよ?敬語は構わんが、…その……先輩はやめないか?
 1コしか違わないしよ?」
は、人差し指を立ててモノを数えるかの様に話す。
「エッ…と、マリク……ですか?」
「そうだ…」
コクリと頷いて、 の顔を窺う。
しかしその瞬間、 はマリクへ満面の笑みを向ける。
「やっぱり、そんなこと言えないですよ。
 マリク先輩は、私だけの先輩だものv」
そう言って、 はマリクに抱きつく。
マリクは諦めのため息をついた。

―――そして木から降りた後………
「…あのよ?………一つ聞きたいことがあるんだけどヨ?」
マリクは口ごもりながらも、 に向かって質問を投げ掛ける。
「何ですか?マリク先輩」
「その……城之内の事なんだがよ………」
「…?城之内先輩がどうしたんですか?」
は首を傾げながら、マリクをじっと見つめる。
そんな彼女の視線から逃れる様に少し目を背けると、クスリと笑う の声が聞こえてきた。
「あのですね?城之内先輩とは、何でもないんです。
……ただ……」
途切れた の話から、マリクは再び彩の方へ顔を向ける。
「毎朝、新聞配達してる時の先輩とお話しするのが日課になってたんです。だから………」
マリクは の言葉を聞き、心の中でホッとさせる。
しかし、そんなマリクを見て何かを察したかの様にニコリと笑うと額を人差し指で突っついてみせた。
「マリク先輩、ひょっとして焼きもち焼いてくれたんですか?」
「………なっ……そんなんじゃねぇ!!!」
マリクはいきり立って、 に怒鳴りつけた。
「や〜ん、マリク先輩が怒ったぁ〜〜」
は半分おふざけ気味に声を上げる。
「………ったくよぉ……
それにしてもよ?お前、朝起きるの早いんだな?」
「ハイ!朝起きたら、いつも一番にマリク先輩に挨拶する事にしてますから♪」
「………ハッ??????」
ニコニコしながら言う に対して、マリクはそれ以上追及することはやめた。
恐ろしい話になりそうな予感がしたからだ。
「ま…まぁ、それはいいとして……取りあえず、今日の所は帰ることにするよ」
「そうですね。先輩のお姉さん、きっと心配してるんじゃないですか?」
「……さぁな……姉上の考えている事は、オレにはさっぱり解らんからな…」
はクスッと笑うと、そのままマリクを送り出した。
「それでは、また明日。学校で会いましょうね。センパイv」
「あ……あぁ…………」
そして別れの挨拶をすると、マリクは帰路に付いた。
その後ろを見守る様に、 はじっと見つめ続けた。

















―――そして、次の日の昼休み………
「マリク先輩!まーた、こんな所で寝て…………
そのうち、日干しになっちゃいますよ?」

  ………またかよ……しょうがないな……

マリクは目だけを開けると、 をじっと見つめた。
そして次の瞬間、 の腕をグッと引っ張る。
「…キャッ!!!」
突然の事で、黄色い声を上げると次の瞬間にはマリクの上にかぶさるカタチとなっていた。
「マ……マリク先輩!!!」
余裕を見せる様に、ニヤリと笑うマリク。
「な……」「何やってんだよ……」
が『何するんですか!』と言う前に先を越されてしまった。
「オレの安眠妨害が出来るのはお前だけ何だからな?」
目を細くして笑みを漏らすと、 の頭の後ろへ腕を回す。
「……あのね……私、マリク先輩の事、ずっと前から好きだったんですよ?」
その言葉に、マリクはすかさず言葉を返す。
「そうか……じゃあ、オレがその分返してやるよ……」

そして、マリクは腕に軽く力を入れて引き寄せると……
互いの唇が重なりあった。
予鈴のなる音が聞こえる。
そんな音も聞こえなくなるほどに、強く強く抱きあった。


--- E N D ---

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コメント・・・
や……やっと出来た………この小説文字打つのに、半月以上かけてしまった………
何て、超遅………その間、サイトがかなりお留守になりっぱなしになってしまった…
取りあえず、この小説書けた自分に拍手………
きっと裏マリクは書けんだろうと思いながら、面白半分で書きだした小説……
内容も、山場を考えてただけで殆ど成り行きで書いてました。まぁ、それはいつもだが………ハハッ(^_^ゞ
なんとかはなってること多いし〜〜(^ ^)
この小説のヒロインはある意味ストーカーです。はっきり言ってしまえば、某可憐さん(某ドラマ番組の)をイメージしたというかキャラ的にもそのままだったり……ハッピーエンドストーカーが結構好きだったり。
でも城之内くんがかなり可哀想な役……密かにヒロインのことが好きだという……
健気に応援する城之内くん………しかし、私の書く小説ではサブキャラとして城之内くんを出すのが多いなぁ……とっても書きやすいからな、城之内くん。そのうち、主人公としても書いてみたいもんだ……
始めの設定としては、裏マリクに『好きと言わせよぉ!!!』『名前を呼ばせよぉ!!!』が目的で書いてただけなのです。結局口では好きは言わずだけど……(^_^ゞ
02.08.12