ククク…最高だなぁ…エェ!?
深い深い闇の中、小さく呟きを溢す1人のオトコ。
その声は地獄とかそんな言葉では、浅すぎるほどの地に付いた声だった。
「クッ…や…めろぉ〜!うっ…」
ぴた…ぴた……
水の滴り落ちる音………
静かだからこそどんな小さな音さえ大きく聞こえてしまう。
その水は自らの弱い部分に引っ付いた。
「う……」
何とも言えないほどの苦痛が、身体全体に広がった。
「…オレはこう見えても、上手いんだぞ。大人しくしてろ…バクラ」
「うっせぇ!もうイイだろ、ココまでやったんだ。そうだろ、マリク」
「いや…ダメだ…まだ、ここにいるんだ」
マリクは逃げないように、バクラの身体をガッシリと柱に縄で縛りつける。
「……何しやがる!!! オイ、これ解けよ。逃げねーからよ」
「ダメだな…お前は今、オレだけの言うことを聞けばイイんだよ」
闇の人格である2人。
深き闇の世界から這い上がれずにいるバクラに、手招きをするように声を掛けたのがマリクだった。
誘われるようにそれに手を伸ばしたバクラ……それが、事の発端だった。
「イタイか、エェッ!? ククク…痛くねーわけ無いだろうがなぁ!」
「……ッチ…」
その言葉に逆らえずにいる自分がもどかしくて、顔をしかめて舌打ちをする。
………!!!
マリクの持つ何かに触れられて激痛が走る。
身体が自然と逃げをうつ。しかし、縄で縛られているためにその場所からは動けず身もだえを繰り返す。
そんなバクラに、マリクはうっすらと嘲笑を浮かべながらその光景を眺める。
「イイ様だな…お前にしてやれるのは、今この場にいるオレしかいないのだからなぁ!」
「……もういい…」
「あぁん、なんだって?」
「もういいって、言ってんだよ!それをオレ様によこしな!!!」
バクラはマリクの手に持つそれを、引ったくるように奪う。
「ン…あぁぁぁ!! お前、何時どうやって縄をほどいた!!?」
「こんなもの取る事位、オレ様にとっちゃぁ朝飯前なんだよ、それにこんなケガくらい自分で手当て出来る!!」
ツーンと鼻を突く、オキシドールの匂いが漂う。
どうやらそれはピンセットで挟まれた消毒用の脱脂綿の様だ。それを、自分の足に出来てしまった傷口に当てると再び痛みが広がる。
「オイオイ、だからオレがやってやると言ってるんだ。バカめ…」
「なんだと、てめぇ。元々貴様の所為なんだよこの傷は!! 精神体だからって傷つけられちゃぁ、痛いんだよ! この身体は宿主のモノなんだ、どうしてくれるんだ!?」
マリクは、ほくそ笑んで横目でバクラを見る。
「ククク…さぁてね…」
「『さぁてね』じゃねぇ!!」
バクラはマリクのおでこ――即ち、第3の眼――にチョップを入れる。
「…あう……」
暗闇で始まり終わることの無いこの場所。
その中で場にそぐわないような可愛らしい声が響いた。
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