「城之内くん、早く早くぅ〜。寒いよ〜」 「わーってるって、もうちょっと待ってろ、遊戯」 今、学校の掃除の時間でボクと城之内くんは、裏庭の清掃を済まして教室に帰ろうとしてた所だった。 …でも、城之内くん、ボクが終わろうって言った時に、更に気になる所を見つけたのか、再び地面をホウキで掃き始めたんだ。 …さっきまで、あんなに早く終わりてー!って言ってたのに…… 普段、家事とかやってるせいなのかな。気になる所があると止まらないみたい。 でも、それが城之内くんの良い所なんだけどね。 ちょっとだけボクも手伝ったんだ。 そしたら、城之内くんは本当に嬉しそうに『ありがとな!』って言ってくれたんだよ。 ボク、城之内くんにそう言われると、いっっっ……ぱい頑張れちゃう。 掃除も終わって、ボクと城之内くんは掃除道具を片付けた。 その時城之内くん、ボクにこう言ったんだよ。 「遊戯、助かったぜ!ありがとよ!! …また一緒の場所に当たるといいな」 「うん、そうだね。城之内くん」 掃除の場所は、日によって違う。しかも、誰と一緒になるかも全然分からない。みんなルーレット方式で決まるんだ。 ボクのクラス、みんなゲーム好きな子の集まりみたいなモノだから、そんな事をやってるんだ。 今日は、たまたま城之内くんと一緒になっちゃった。 城之内くん、とってもビックリしてた。ボク、嬉しくってずっとニコニコしてたら突っ込まれちゃった。『そんなに、掃除が好きなんか?』って。 エヘヘッ、違うよ。口に出して言わなかったけど、掃除時間が好きなんじゃないんだ。 城之内くんといられる時間が大好きなんだv だけど、城之内くんはどう思ってるのかなぁ… ボクと同じ気持ちだったらいいな♪ …そう思ってたら、城之内くんから声がかかってきた。 「さっ、行こうぜ遊戯! ホラ」 そう言ってボクの手を取って、掃除の場所である裏庭へと向かっていったんだ。 そうしてボク達は掃除の時間に一緒にいられることになったんだ。 やっぱり城之内くんも、ボクと同じ気持ちだったみたい。 でもぼやいてたの聞こえちゃった。…外はもうやだなぁ…って。 ボクはこの裏庭の掃除、担当の先生もいないからそれだけでとっても嬉しかったんだ。 寒過ぎなのはちょっときつかったけどね。 そして、終わっちゃった掃除時間。 帰りの支度をして、城之内くんと帰ることになったボク達。 今日は、みんなとは帰らずに2人だけの用事があるんだ。 「じゃあ、行こうぜ。遊戯」 「うん」 城之内くんとボクは、一緒にその教室を後にした。 ボクの手には大きな荷物。 何度か城之内くんに持ってやろうかと聞かれたけど、ボクは断ってずっと頑張ったんだ。 でも城之内くんはボクに気を使って、その辺りにある大手のスーパーに入ってちょっと一休みすることにした。 休憩所のベンチに座って、少しの間疲れを癒すことにした。 城之内くんは、ボクの好きなコーラを買ってきてくれた。 そのコーラは、いつも飲んでるものと同じはずなのに、とってもおいしく感じたんだ。 それと同時に、ボクの心臓もだんだんとドキドキしてきた。 だって、城之内くんさっきからずっとボクの事だけ見ててくれてるんだよ。 ボクは、隣に座っている城之内くんの横顔をじっと見つめてしまう。 何度か、あくびを繰り返す城之内くん。何だか、眠たそう…。 連日バイトで大変なのに、ボクのワガママはしっかり聞いてくれる。 でも城之内くんからボクにお願いされる事ってあんまりない気がする…。 ボクは暫く俯いてしまった。 その時、ボクの肩に何かがのしかかってきた。 そこには、城之内くんの顔があった。 …じょ…城之内くん! ボクは、何事かと思い、思わずそれを声にして言ってしまいそうになったが、それを何とか思いとどまらせた。 よく見たら、しっかりと目を閉じていたから。 そっか、眠っちゃったんだ… そう言えば、バイトで徹夜したって言ってたっけ。学業と仕事を両立するって、大変なことだもんね。 何だか心配だなぁ。城之内くん、ボクの事ばかり心配してくれてるけど、それ以上に城之内くんの身体の方が、ボク心配だよ。 城之内くん…ボク、城之内くんの為だったら何だってするよ。 まだ時間があるし、少しの間だけおやすみなさい… でも、時間は確実に流れていってしまう。ボク達の予定している時間まで、後少し。 城之内くんが買ってきてくれたコーラを飲み干し、ただ時間を待った。 それだけでも、ボクは全然退屈じゃなかった。 だって、城之内くんといられるだけでボクは十分だから。 城之内くんはピクリともせずにずっとボクの肩で寝息を立てている。 ボクは城之内くんのそんな寝顔をじっと見つめてしまう。 …なんか、城之内くんってカワイイな……… ……って、な…なに考えてるのボク! ボクは、突然考えてしまったその事から、頭を振りかき消そうとした。 でも、再び振り返り見てみると、やっぱりカワイイって思ってしまう自分がいた。 あぁぁぁ、ゴメンネ城之内くん! ボクは頭を抱え込みその煩悩を打ち消そうとした。 その時、そんな気持ちに反応してか、城之内くんはピクリと動く。 …起きちゃったみたい…… 少し寝ぼけ眼で、ボクを見つめる城之内くん。 するとある瞬間何かから解き放たれたように、バッとボクから後退った。 「わぁっ、ごめん遊戯。オレ、いつの間に寝ちゃったんだ!? 重かったろ? 本当に悪かった!」 城之内くんは、すまなそうに両手を自分の顔の前で重ね合わせ、平謝りを繰り返す。 「い…いいよぉ。ボクは何とも思ってないから、疲れてるからしょうがないよ」 ボクは城之内くんにそう言葉を返した。 謝らなければいけないのはボクの方だから!…何て言えるはずもなかった。 あんな事、思ってしまうなんて…… そう思ってると城之内くんは立ち上がって意気込みを入れている。 「よし!そろそろ時間だな。行くぞ遊戯、あの場所へ」 「そうだね、城之内くん」 時刻はまもなく夜の8時になろうとしていた。 ボク達は目的のその場所へと足を運ぶ。 その場所に着いたボク達は、ある人を待つ。 とっても寒かったけど城之内くんが事前に用意してくれた、羽織りモノがとっても暖かかった。 ありがとう、城之内くん。 その時、前の方から歩いてくる少女がひとり… 彼女は、疲れた顔でひょこひょこと歩いていた。 学校…または仕事帰りだろうか? ボクと城之内くんは目を合わせると、その人の前にダッシュで駆け寄る。 その人はとっても驚いていたけど、ボクは笑顔で元気よく! 「今日もお疲れさま。ハイ、これ、ぼくと城之内くんからプレゼント。お誕生日おめでとう、お姉ちゃん!」 「、おめでとう!オレ達からのプレゼント、受け取ってくれよな? 遊戯がさ、『ボクが渡すんだ!』ってずっと頑張って持ってきたんだぜ」 ボクは城之内くんに腕で首に巻き付かれてしまった。 「く…苦しいよ…城之内くん!」 「へへ…と言うことで、これからも頑張ってくれよな!!」 「あぁ〜〜!それ、ボク言おうとしたのにぃ…」 「言ったもん勝ちに決まってるじゃねえか!ハハハッ……」 「もう、城之内くんったら……えっと、ボクも応援してるから、ずっと頑張ってね」 そして、足の先から粒となって消えていく遊戯たち。 そこには、すでに何も残らなかった。ただ遊戯たちが残した、プレゼント。それだけだけが残っていた。 年に一回だけのバースディ。 自分だけの奇跡が起せる日。 そして、その一夜の出来事は、メロディが流れ去る様に 頭の隅から隅まで消え去られてしまうだろう。 でも、神様が意地悪じゃなければ、何かの形として残してくれるかもしれない…… 信じれば、きっと…必ず……
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