+++ボクだった頃……+++




-----そこまでは、良かった。………それは、楽しく遊んださ。友達と鬼ごっこしたり、追いかけっこしたり……
たくさんの幸せを感じていたんだ……





 

 

 

 

……家に帰るまでは………


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボクは、友達とまた明日遊ぶ約束をし、別れを告げて自分の家へと帰った。
ボクは、家の前に立った。
いつもと同じ光景、同じ家から違う何かを感じた。


「ただいまーーーー!!!」


ボクは、勢いよく扉を開け、いつもより大きく言う。



「どうしたの、そんなに慌てて………」
ボクは、母様が目の前にいるのを発見した。




……はずだった。





しかし、それはボクの前から煙のように消えて、姿さえ無くなってしまった。
「ボクは………」
そのままその場で立ち尽くすボク………





---ボクは……がまん……するんだ………





泣きたくなる衝動から逃げるように、ボクは自分の部屋に駆け込んだ。
そして部屋のベッドの上に倒れ込み、考えてみた。





…ボクは…何だかわからない……





誰かいないか家の中を探す気も起きなかった。


……誰がいる訳でも無いことがわかっているから……


その事を知っている訳ではない…


何となく、そんな気がしただけ………




ボクはギュッと目を瞑ってみた。





-----浮かんでくる家族の顔、そして、自分……

そこに別の何かが浮かび上がる。

ぼやけてて殆ど何も見えないが、輪郭だけで形どられた人物がそこにいた。

その人物は、ボクに何かを言っている様に見えたが、声は聞こえない。

ボクはそれに近づくと、その輪郭だけの人物は光りだし、ボクに迫る。

そして---ボクと重なったその瞬間……

ほんの極微かな声が、耳に入る。








---そして……ベッドの上にいた自分に気がついた。



…ボク、寝てたんだ………



ふと、自分の目元に手を当ててみる。ボクの手に暖かな水が引っ付いた。



---ボク…泣いてた?……



呆然と濡れたその手を見つめる。
そうすると、また1つぶ2つぶの水がこぼれ落ちる。
「あっ…あれ……」
誰もいないこの家、この部屋でボクは1人で泣いた。







………あまりにも心細すぎた。





 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…セト……」

後ろから、ボクを呼ぶ声がした。父様の声だ。
でもボクは振り向かない。こんな顔、父様に見せられない。
少しの間、沈黙が続く……
そして、足音が近づいて来た。
その足音は、いつもより重く感じられた。






---いやな予感がする………






ボクの肩に微かな体重が伸し掛かる。
「セト……私について来てくれないか………」
ボクは顔が見られない様に横目で頷き、そして立ち上がる。
ずっと俯いた状態で父様に肩を支えてもらいながら歩みを進めた。

---進む---