-----オレは、その時すでに感じていたのかもしれない、その予感の意味………
…………母の死を………
…病院の中、横たわるママの前で何故かボクの頭の中は真っ白だった。
ベッドの上で、真っ白な布をかぶせられたママ……
昨日までボクと楽しく話をしていたママ……
ボクには、すべてが同じように見えた。
ただ、しゃべるかしゃべらないかの違いだけで………
パパは「遠い空の彼方へ行ってしまった」と言ったけど、そんなのボクには何の慰めの言葉にもならない……
…ボクには…がまんが……できるから………
そして、その動かないママをじっと見つめた。
「セト……」
パパの声が後ろから聞こえる。
「……何?」
ボクは後ろを振り向かず答えた。
自分から発せられた声が自分を嫌にしていく。パパは振り向かないボクの前に立ち、ボクの目線の高さまでかがんだ。その腕には小さな小さな赤ちゃんが抱かれていた。
「セト……実は…」
「……その子は?」
パパは、ボクをしっかりと力強く見つめる。
「お前の弟だ…名前は、モクバと言う……」
そう言うと、パパはその小さな弟をボクに預ける。
そしてボクの頭を撫で……ボクを、抱きしめた…………
強く…強く……抱きしめてくれた。
「……ッセト!!!」
叫んだと同時にパパはそのまま泣き崩れてしまった。
---パパが、パパじゃないみたいだ………
いつもと違い、威厳も何も無くなっていた………
…………パパ………
ボクはそれと同時に弟モクバを抱きしめる腕の力が強くなっていた。
………ボクは…がまん……でき……な…
そして、ボクは泣いていた。いつまでもいつまでも、泣いていた。
パパ、そして、弟モクバと共に………
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