---初体験---

ある日の学校の帰り道・・・
私はマリクくんといつもの様におしゃべりをしながら歩いていた。
「あ、そうそう。今日の宿題わからないところがあって・・・」
「え、どうしたの? ちゃんらしくないね。どこどこ」
教科書の一部を指差し、
「えっとここなんだけど・・・」
「ん〜〜、ボク分かるけど・・・良かったら今日ついでにボクの家で宿題教え合いっこしようか?」
「うん!是非とも、お願いします。マリクくん!」
宿題のこともあるけど、実はマリクくんのお姉さんにまたお逢いしたかった所だったし。楽しみ♪

私は心弾ませて、マリクくんの手を引っ張って家路を急いだ。
家はお隣同士。だから多少遅くなっても、家にはすぐ連絡入れられるので時間にはあまりとらわれずに済む。
「じゃ、上がって」
マリクくんは家の扉を開け、私を招いてくれた。
シーン・・・と静まり返った、家の中。
「おじゃましまーす」
靴を脱いで揃え、彼に部屋へと招かれる。
手早く飲み物を用意してくれたマリクくん。
「あ、わざわざありがとう。そういえば今日、ご家族はいないの?」
「うん。兄さんも姉さんも泊りがけの仕事に出ているから、今日は帰ってこないんだ」
「そうなんだぁ・・・ちょっと残念」
マリクは怪訝な面持ちで、テーブルにグラスを並べつつ私の顔をのぞく。
「残念?」
「うん、マリクくんのお姉さんにまたお会いしたいなぁって思ってたから。女としてメイク術や美しさの秘訣なんかも教えてもらいたいし」
「フフッ、姉さんに伝えておくよ。・・・そっか、ボクもそれはちょっと残念かな」
「エ?なんで??」
訝しげに小首をかしげる私に、「ささっ、宿題をしないと」とマリクくんに返されてしまった。

宿題が進むにつれ静かになる部屋の中。
カチカチ・・・と時計の音が大きく聞こえる。

後、一問で終わりだ。
ふとマリクくんを見てみる。

彼はもう終わってしまって、先ほど少し眠るねと言って机に突っ伏している。
長いまつげ。整った顔立ち。

思い出してみれば、もうプロポーズを受けたも同然なんだよね・・・
そんな彼と今2人きり。
その状況に今更になってドキリとする。
マリクくんには悪いけど、お姉さんに会えることで胸がいっぱいだったのでうっかりしていた。
大好きな男の子の部屋に転がり込んでる、自分。
でも私もお年頃、彼とまた沢山沢山キスがしたい。そんな妄想に切り替わっていた。
フッとよぎったその思考を振り払うように最後の一問をやり終える。
「ね?マリクくん、終わったよ?」
「あ、あぁ。そうか、ゴメン。ボク完全に熟睡してた」
トロンとした表情、こんな猫みたいな彼が好きだ。プロポーズを受けた時に見せた、男としての彼もすべて好き。
「いいよ、ありがとうね。分からない所も教えて貰ったし、助かっちゃった」
「うん、こちらこそだよ。来てくれてありがとう」
にこりと微笑むマリク。寝起きでちょっとポーッとした顔が、また妖美な雰囲気を醸し出している。なんだかドキドキしてしまう。
「じゃ、じゃあ、マリクくん。これ片付けてくるから、ご馳走さまでした」
飲んでいたグラスをお盆に乗せて、キッチンへ持って行こうと立ち上がる。
「ね、ちゃん? それはそのままでかまわないよ。ここはボクの家だから、気にしないで」
「?うん」
言われるがままに、テーブルに戻す。
すると彼は私に歩み寄り、後ろからギュッと抱きしめ耳元で囁く。
「ね?ボクの家に来たんだから・・・またキス、しよ?」
「・・・・・うん」
その私からの返事を合図に、マリクは私の目を閉ざさせた後、唇に口付けをする。
彼とのキスは大好きだ。
初めてのキスで味わった彼からの濃厚な口付け・・・それからは彼とのキスが堪らなく好きで、いつも待ち続けている。すると見透かしたようにしてくれる。
口では言えないけど、今日も熱いキスを期待していた。
ちゅっ。ちゅっ。ちゅっ。・・・
数回の軽い触れるだけのキス。その続きが来るのかと数秒待ったけど、来ない。
あれと思い、目を開いた。
「マリク・・・くん?」
「今日、しない? これ・・・」
小さな四角のビニールに入ったそれを見せつつ・・・
この先はしたこと無いけど、それが何を意味しているのかは解る。
いやいやいや、待ってくれ・・・
「じゃなきゃ、キスしないぞ〜」
なんて、意地悪なことをのたまってらっしゃる。
「私、まだしたことないし駄目だよ・・・それに」
「?」
「今は無理です!」
「なんでー!何で「今は」なんだよ」
「だって・・・だもん・・・」
「え?なんて?」
「だって私のあそこ、ジャングルで見せられないんだもん!!」
その私の一言でシーンとしてた室内が、彼の笑い声でにぎやかになる。
「そんなこと、気にならないし、気にしなくてもいいんだよ」
きっぱりという彼。でも私だって女の子だし、はっきり言ってそんな醜い部分を見られたくない。戸惑っている私をギュッと抱きしめ、囁くように耳元で、
「そんなところも含めて、ちゃんはすごく魅力的だから」
と続けられる彼の言葉にしびれてくる。その事抜いても、自分はまだ高校生。
だけど・・・そんな私の気持ちを見透かしてか、なおも囁くように
「ねぇ、しよ? 避妊もする、優しくするよ。大好き、だから・・・」
「・・・うん」
そんな彼の懇願に私は負けた。


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