「わぁ! いっただきまぁ〜す♪」 テーブルに広がる朝食。そこに横から添えられる焼き立てのパンケーキ。 素良は出された朝食を、美味しそうに頬張る。 彼は遊矢のいる榊家で、暫く居候していた。 こちらの次元に来てから、融合次元に居た頃と打って変わった様なまるで違う楽しい日常を送っていた。 特に遊矢と毎日を過ごせる事で、心から幸福感が満たされていた。 「って、おい」 食べ続ける素良の横から、遊矢の声が聞こえる。 「遊矢のお姉さんのパンケーキ、いつもすごく美味しいよ!」 「どんどん食べていってね、素良くん。いくらでも作っちゃうから♪」 遊矢の母は、手際よく作り上げた朝食を並べていく。 素良が遊矢の母を褒めると、頬を赤らめて照れる仕草をする。 乗せられている様で乗ってあげている情態だが、更に気分良くし食事を作っていく。 「おい、いつまで家にいる気だよ」 「あ、遊矢。オハヨ〜」 「ああ、オハヨー……って違う! 母さん、オレもパンケーキぃ……」 遊矢は素良の目の前に広がる朝食郡を見て、ひもじそうにお腹を押さえた。 「遊矢も、もちろん作ってあるわよ」 「さっすが、お姉さん♪」 朝食も食べ終わり、素良は遊矢と並んで遊勝塾へと向かった。 他愛も無い遊矢との会話も楽しくて、一つひとつの交流が毎日の幸せを育んでいた。 会話を弾ませつつ、遊勝塾までの道を進んでいた。 流れる川の横にある土手を歩く。 「あ、遊矢。あそこに子犬がいるよ! 可愛いなぁ、拾って行っちゃおうか?」 今いる場所から少し離れた川岸に、子犬がポツンと寂しそうに座っていた。 「おいおい、うちは母さんが拾ってきたペットでいっぱいだって…」 「いいからいいから、ちょっとそこで待ってて遊矢!」 素良はそう告げて、子犬の元へ走った。 「あ、オイ! ……全く」 その子犬の元にたどり着き、抱き上げる。ふわふわして気持ち良い。 少しならば良いかと、遊矢は立ったまま彼を見守る。 素良は視線を感じて彼をちらり見ると、軽く手を振ってくれた。 手を振り返すと、お互いに何処とはなくドキリとした感覚を覚えた。 しかしそれはどちらも知る術も無い。 素良はゆっくりと惜しむように、その手を下ろす。 (ボクは、遊矢の事が好きだ。 何よりも一緒にいて凄く楽しくて、いつもドキドキする様な幸せを感じるんだ。 遊矢は、ボクの事どう思っているんだろ……) 暫く子犬を撫でり撫でりとしつつ、じゃれ合った。 「おーい、そろそろ行かないと塾が始まっちゃうぞぉ! 置いて行くぞ」 その声に、わたわたと慌てる素良。行く風を見せつつ、背中を見せる遊矢。 「あ!! 待って、もう行……」 返事をする途中で、突然何かに口元を塞がれる。 すると突然気力が抜けたかの様に、その先の言葉を発する事が出来なくなってしまった。 「……ん? 素良?」 途切れた言葉を不振に思い、遊矢はすぐ彼の元に目をやる。 ぐったりとした素良が、大男に連れ去られようとしていた。 「何だ、お前は!!」 叫びつつ、すぐさま素良の元に向かう。 『やべッ!!!』 だが大男は素早く車に乗ると、あっという間に走り去ってしまった。 「……マズい!!」 デュエルディスクから、塾長へとすぐ連絡を入れた。 今起こった事を短く伝えると、塾長は衝撃を受けながらも警察に連絡を入れると返答をする。 「お願い! オレは後を追うから!!」 遊矢は電源を切って仕舞うと、走る速度を上げた。 |
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