「……遊矢、お願いがあるんだ」 「どうした?」 素良は添えられた手を頬から離して、間を置きつつゆっくりと言葉を紡ぐ。 「遊矢に、シてほしいんだ」 「突然、なに言ってッ!」 「ボク、耐えられないんだ。知らない人に好き勝手されて……」 涙ぐむ素良に、遊矢は言葉を失った。 (こんなにも小さな体で、どんなに屈辱だっただろうか……) 一瞬でも素良と心が繋がって、舞い上がっていた自分を叱咤した。 だけど―― 「やっぱりダメだ、素良。ココは病室…いくらなんでも……」 「お願い、遊矢! ボクの我侭だけど…あんなこと忘れたいから……」 素良は思い出せない事に寄る偽りを含めつつ、確信して言葉を続ける。 遊矢は素良の涙で潤んだ瞳を見つめ、片手を持ち上げ甲に軽くキスをする。 「……待ってろ」 入り口に向かい廊下を確かめると、ドアを閉めて鍵をする。 見えないように覗き窓も布で覆って、廊下から見えないようにした。 彼に背を向けつつ支度をし、呼吸を整える。 遊矢にとっても、自身を求められるのは初めての事…… 無理させないようにリード出来るだろうか。 意を決してフワッと素良の方に振り向き、余裕の表情を作る。 「遊矢…ありがとう」 「礼なんて言うなよ。……同意の元だろ?」 遊矢はそう告げて制服のジャケットのみ、脱ぎ去って椅子の上にそっと置いた。 そして靴を粗末に脱ぎ散らすとベッドに上がり、座っている素良の隣に付く。 邪魔にならないようにゴーグルを外すと、ふわりと髪が揺れる。 それを横に付けてある台の上に置いて、素良に向かい両手で顎を支え、軽く口付けをする。 「うん」 お互い見つめあう。 素良は緊張しているせいなのか、少し震えていた。 薄暗く張り詰めた空気の所為なのか、それとも心の奥底の記憶に怯えているのか…… 遊矢は、そんな彼にニンマリと笑みを向ける。 「コラ。そんな強張らせてちゃ、出来るものも出来ないぞ」 そう伝えつつふんわりと優しく頭を撫でると、気が付いた様に頭を振るい、潤んだ瞳を遊矢に向けつつコクリと頷いた。 そして見つめる素良に目を細めつつ、彼の唇にキスを落とした。 背中に手を廻して負担が掛からない様に、ゆっくりと自分の体重をかけて素良の身体を押し倒す。 リップ音を立てて触れるだけのキスから、じわじわと舌先を挿入させて口内の入り口付近をゆっくりなぞっていく。 「……んッ…」 と、素良の舌が待っていられないとばかり、遊矢の口内に進入してきた。 「ふ……んん…は…」 積極的な彼に、思わず声が漏れる遊矢。 素良の舌によって絡め取られ、舌の筋をツツッとなぞられる。それに答えるように、遊矢も彼のそれに合わせて絡めていく。 薄く目を開け、必死に求める素良を見つめる。 角度を変えて口付けを続けつつ、手をゆっくりと患者着の上から身体のラインを這わせて下に移動させると、ウエストで繋ぎ合わせてある蝶結びに辿り着く。 ハラッ解けると、あっという間に胸…だけでなく下着部分以外の肌がすべて露になる。 細くて華奢な素良の身体を首筋から胸、腰にかけてゆっくりと往復させつつ指を這わしていく。 口付けを惜しみつつ、ゆっくり唇を離す。 「…ん……はっ……あ、はぁ……」 離した反動からか、素良の口から色っぽい声が漏れる。 その声に遊矢はドキリと心臓が跳ね上がる感覚を覚えた。 「素良。今、オレ……すごくドキドキしてる」 「……うん。ボクも」 そう言いつつ遊矢は着ているTシャツを脱ぎ去る。その細身の彼の体に、素良は熱っぽい瞳でポーッと見とれた。 そして素良の手を取り、その手のひらを両手で自分の胸へと押し当てた。 「ホラ、こんなにも……」 強く脈を打つ身体。素良は其れを感じる様にそっと目を伏せる。 「本当だ。でもボクのももっとスゴイよ?」 その返答に遊矢はその手をそっと横にやり、そっと胸に耳を直に当てて心臓の音を聞く。 「うん……どくんどくんって、オレを呼んでるみたい」 心臓音を聞き入り、そっと顔を起こして俯けると、その場所にリップ音をさせて数回キスを落とす。 そしてその横、胸に点在している桃色の突起まで移動し、下からなぞる様に舐めあげた。 パクリとそれを口に含むと、コロコロとそれを転がし始める。 「……んっ、はっ……遊矢」 「ん、どうした?」 「…なんか……それ、変な気分…」 遊矢はその言葉で、ハタとする。 こんなにも性行為、その感覚に対して何も知らない小さな子供なんだ…と。しかもその上、大の大人から極悪で非情な仕打ちを受けた事――。 その事になんとも言えない怒りを覚え、苛立ちが沸々と込み上げて来る。 「素良……」 「? どうしたの遊矢」 トロリとした瞳で遊矢を見つめ、突然の呼びかけに小首を傾げる。 遊矢は一緒に居られる事も、今もこうして行為をしていられる事にも本当に幸せを感じていた。 しかし逆に其れによって、無理をさせてしまうかもしれないという恐ろしさもあった。 あんな事があった後なのに、このまま続けて行けば壊してしまうかもしれない、もしかしたら自分の本能が止められないかもしれない……そんな思いが交錯する。 「……無理、して無いか?」 「うん、大丈夫…だよ」 余裕が無いながらも、遊矢に柔らかな笑顔を見せる素良。 「そうか」 素良のその表情を見て安堵し、ニコリと返す遊矢。 その思いを隠す様に、顔を素良の胸に埋めて再びその突起にそっと触れていく。 片方は舌先で優しく転がし、もう片方は指でそっとつまみ上げそれを何度ともなく繰り返す。 「!! ふぁ…っ、ね……ぅうん、はぁぁっ…」 普段の素良からは聞き及ばない官能的な声色が聞こえると、遊矢自身の心臓の鼓動が次第に早くなっていく。 もう片方の空いた手を身体に這わせて下半身中心部をそっと摩る。 「あ……」 触られて、素良から漏れる小声。 下着の上からでも解った、すっかり勃ちあがったそれに。 ウエストのゴムラインに手をかける。 「いいか、下ろして?」 確認を取らなければならない様な気がして、素良の潤んだ瞳を見つめる。 少し間をおいて、彼はコクリと頷いた。 そっと口付けを交わしつつ、片手でゆっくりと下着を下げていく。 そして中途半端に下げられると、性器部分を暖かな遊矢の手がそっと包み込こんだ。 頬を赤らめ、潤んだ瞳を左右させて戸惑う素良。 「大丈夫だから、な?」 「……うん」 遊矢自身も大丈夫な訳ではない。 知識があっても、何もかもが未知の行為。 それは自分自身への言い聞かせでもあった。 それを悟られない様に、素良の合意も無しに速やかにその素良自身を自分の口に含んでいく。 「ゆ、遊矢!?……あっ」 案の定、突然の行為による驚きの声。 「そんな…とこ、舐めちゃ……ダ、メ………ッ。くゥ…」 舌を動かして舐めあげると、小さく濫りがわしい悲鳴をあげる。 思ってもなかった行為に素良は待って、待ってと抵抗するが、お構いなしと続ける遊矢。 シーツをグッと力を込めて握り締め、歯を食いしばって声が漏れるのを防ごうとするが、かなりそれも困難な状況。 素良は中途半端に残っている意識だけ頼りに、反射的に自分の手首で口元を塞いだ。 そんな素良を知らずに、彼の性器に柔らかな遊矢の唇がとても官能的に擦り続ける。 「ゃ……汚…いって…ら…め……ぁぁっっ」 遊矢は上目遣いで素良を見やると、頬をピンクに染めて上擦った表情で堪えている姿を捉える。 とても辛そうで留めてやりたい感情がある反面、膨れ上がる欲の感情からさらに行動へと気持ちを湧き立たせていく。 後ろの袋もそっと揉み上げつつ、銜えたまま出し入れを繰り返す。 素良は湧き立つような感覚を押さえつける様に、手に力を込めて彼の頭をグッと押さえつける。 「あ…ッ……あ。も、ダメ……ンンンッッッッ!!!」 素良は唇をかみ締め、出来る限り声を出さないようにして…… そしてすべてを解き放つかの様に、素良は果てた。 吐き出されたモノを、遊矢は思い切ってゴクンと飲み込んだ。 弛緩させた身体で、呼吸を乱しぐったりとする素良。 まだ溢れ出る残りも気になってそっと舐め上げると、素良の身体がビクビクと小さく痙攣を起こす。 「ゆ、ゆう…や。も、もう、いいから……」 「そうか?」 ゆっくり手を下ろしてから張って隣に付いて座り、素良の顔を上から見つめつつ汗で湿った前髪を梳く様にして頭を撫で上げる。 息も絶え絶えの彼は、遊矢の手の感触に瞳をゆっくり開ける。 目の前に付いてくれる遊矢にそっとすりより、うつ伏せて膝に顔を埋めるように抱き寄る。 「遊矢……良い匂いがする」 「わ、ちょ…ちょっと」 自身も勃ち上っている事に慌てる遊矢は、それを隠そうと少し身動ぎをする。 そんな彼を素良は知らずに、膝に伏せたまま目を緩く瞑っていた。 「こんなことオレが言うのも何だけど……身体、大丈夫か?」 「ちょっと、疲れちゃったかな?」 素良は目を擦りつつ、うつろな表情で返答をする。 「あのね……遊矢?」 「なんだ?」 「なんか、ごめんなさい」 「ん? なんで?」 嘘を突き通してしまった事と、遊矢にも無理をさせてしまった気がする後ろめたさで気持ちが交錯する。 「フフッ。今日はもう寝ろ、どう見たってする前から疲れてただろ、お前」 「……うん。遊矢、ありがとう」 「だから礼なんて、いいって。付いていてやるからしっかり寝るんだぞ?」 「うん……ねぇ遊矢? 今度、また続き、した、い…な……」 ゆっくりと言葉も切れ切れに、眠りに付いた。 遊矢はそんな素良の顔の輪郭をなぞる様に、優しくそっと撫でる。 「そうだな…素良」 |
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